目次
1章.脳とメンタルで発達を考える方法
【脳の発達段階によって考える方法】【エリクソンのライフサイクルモデル】
 
2章.乳児期
a.特徴
【発達のスピードの違いについて】【基本的信頼】【愛着形成】【脳】【熱中症】
b.1ヵ月後との変化
【0か月】【1ヵ月】【2か月】【3ヵ月】【4ヵ月】【5ヵ月】【6ヵ月】【7ヵ月】【8ヵ月】【9ヵ月】【10ヵ月】【1歳】【1歳1ヵ月】【1歳2ヵ月】【1歳3ヵ月】【1歳4ヵ月】
 
3章.幼児期以降
【幼児期:2歳】【3歳】【児童期:4歳】【6歳】【学童期:7歳】【10歳】【思春期:13歳】【成人期:23歳】【壮年期(36歳)】【老年期:56歳】

1章.脳とメンタルで発達を考える方法

【脳の発達段階によって考える方法】

 赤ちゃんの脳の成長を眺めることで、自分の脳の不思議さに気づくのです。普段、何気なくやっていることが、決して当たり前のことではなく、脳回路がもたらした奇跡と考えるようです。※8

【エリクソンのライフサイクルモデル】

人間が生まれた直後から死の直前まで、健康に幸福に生きていくことの、ひとつの見事なモデルです。

けれど、すみずみまでパーフェクトによかったという人生はありえない。

最後に人生に満足できること。そのためには、ライフサイクルを本来の順序で歩んでいき、発達し、成熟することが必要です。

エリクソンは、ステップ・アンド・ステップがあると言っています。そして、そこにとび級はないと言います。

みえにくい部分、社会的な人間としての、こころの発達の順序を明確に示したものがライフサイクル・モデルなんです。

みせかけの前進は必ずいつか、逆戻りします。みせかけの前進があって、それがくずれて、問題が大きく発覚(幼いころに経験するはずだった問題が出てきているんです)。

もっとも重要なのはひとつめ、乳児期のテーマ。最初のつまずきが、あとあとに影響してくる。※9

2章.乳児期

a.特徴

【発達のスピードの違いについて】

 子どもの成長には、個人差が1年以上ある場合も珍しくありません。※8

 子育てにこれほど手間がかかるのは、ヒトの能力が高いことの裏返しであるわけです。生まれた直後の判断能力は、動物たちのほうが高いかもしれませんが、ヒトの「初期の能力の低さ」は、のちに「柔軟性の高さ」へと化ける、いわば先行投資。

 親の能力が高いから、救い出す能力があり、赤ちゃんは堂々と未熟でいられるのです。※8

【基本的信頼】

 視覚、聴覚はほとんど発達していないので、スキンシップがとても大事。なかでも口唇。幼児の人生の楽しみは、口唇にあると言ってもいいほどです。口唇の満足が得られないときに身近な指で満足を求めます。※10

エリクソンは0~2歳を乳児期として、危機的な主題(Subject of Crisis)は「基本的信頼」(⇔基本的不信)の獲得。人を、自分を信じられる。※9

 基本的信頼は、世界に対する安心から自分への信頼が生まれること。基本的信頼が得られないと基本的不信となり、劣等感が強くなったり、常にびくびくしたり、何事も悲観的に考えたり、内心傷つきやすくなったり、退行、逃避、自殺といった傾向がみられたりする。結果として、スキンシップの代償として人形や枕を抱いて寝たり、自分を抑え込み本音を出さなかったり、他人の評価を気にしたりする(顔色をみる)。 フロイトは口唇期と呼ぶ。※10

 基本的信頼(ベーシック・トラスト)

エリクソンは、相手を信じることと自分を信じることは表裏一体だと言いました。人間は人を信じることができなかったら、自分を信じることができないんです。

静かに、ひとかに、自分の存在を誇りに思うことができる。その気持ちが自信なんです。

人間が最初に人によせる信頼の原型は、「母親的な人」に対するものだと言ってよいでしょう。お母さんに対して「愛着(アタッチメント)」を形成するといいます。無条件に十分に愛されることによってできるものです。

父親ひとりの家庭になったとき、お父さんが真剣にとりくまれたら、ひとり親で十分な育児ができる可能性も。

だけど、お母さんとお父さんが育児を半分ずつ均等に分担しあうとか、お母さんが従来やっていた役割を一部お父さんが安易に代わってやることをすすめるのは、赤ちゃんの心を知らない人ですよ。お父さんとお母さんを同じように感じとっている子どもはいない。半々に育児をしてほしいと思っている子なんていないんです。

だから安易に役割を入れ替えないで、お父さんとお母さんはそれぞれの役割を担ってほしい。まわりの人々にも、お母さんの重要性を知って、そのサポートをしてほしいんです。

親が、自分の望んでいるような子になってほしい…その度合が強すぎれば、無条件の愛情ではなく、条件付きの愛情になっていきますよね。

幼いときから親の顔色をみてものを言う子が増えてきました。残念ながら、信頼の欠如を感じます。

アメリカの児童精神科医ブルース・ベリー(虐待を受けた子どもの治療研究をしている精神科医)によると、赤ちゃんのときに、泣いてうったえることによって、こころのなかに、将来、人間関係に喜びを感じることのできる健全な能力が育ってくるとうことを言っています。

発達心理学マーガレット・マーラーの「サイコロジカル・バース」によると、赤ちゃんは、妊娠・出産によって身体的な誕生をする。そしてそのあとに、どのように育てられるかとうことによって、心理的な誕生をすると言ったんです。

身近に赤ちゃんや子どもがいる方は、笑いかけてあげてください。喜ばせてあげてください。そしてそれを、あなた自身が楽しんでください。たったそれだけのことで、私たちの社会に、信頼の芽が増えていくです。※9

【愛着形成】

 「母子の愛着」…「困ったときに、この人は助けてくれる」という信頼です。

 赤ちゃんは、自分が泣いたり、笑ったり、アイコンタクトをして感情や欲求を伝えたとき、それに適切に反応してくれる人を「特定の他者(ほとんどは母親)」として選びます。

 形成される最も重要な時期は、乳児期から幼児期早期なのです。

 「愛着行動」…たとえば、母親がいなくなると大泣きしたり、母親に対してだけ、ほかの人に見せない微笑行動をしたりします。ほかの人が抱っこしても泣き止まないときでも、母親が抱っこするとすぐに泣き止み、ホッとした表情を見せることもあります。あまり他人を怖がることがないようです。

 「基本的信頼」…母親を「いつでも帰ることができる安全基地、母港」として、心の支えにすることができます。すると、身体の成長と発達に合わせて、好奇心のおもむくままに行動範囲を広げて、外海に向かって船出していけるようになります。(心地よい対人関係を築いていける)

 →分離不安(母親と離れるときにあまりに激しく抵抗)が少ない。

[子どもに認められがちなストレスによる反応および神経症、心身症など]

新生児期:顔をかきむしる/髪の毛をひっぱる/視線をそらす/あくびをする

以降:吐乳/便秘/下痢/発達の遅れ/成長障害/抜毛/喘鳴

幼児期:指しゃぶり/爪かみ/性器いじり/頻尿/夜尿/吃音/喘息/チック/周期性嘔吐症/肥満/拒食

学童期:抜毛/起立性調節障害/気管支喘息/チック/頻尿/心因性嘔吐/心因性腹痛/消化性潰瘍

思春期:過敏性腸症候群/消化性潰瘍/過換気症候群/気管支喘息/神経性食思不振症/神経性大食症※11

 泣くことでしか意志を伝えるすべをもたない赤ちゃんのストレスは、指しゃぶりやチック症などの症状になってあらわれます。毛布やタオルをしゃぶる癖も同様です。

 同じ指をしゃぶり続けている場合には、注意が必要です。

指しゃぶりをする期間が長くなると、前歯のかみ合わせに影響し、前歯が出すぎたり、逆に引っ込みすぎたりと、かみ合わせが悪くなる可能性があります。※12

「見捨てられる不安」

→脳内には大量のストレスホルモンが産生され、その影響で脳の形成が変わってしまうという研究結果もあります。

→聴覚や嗅覚、触覚に頼って母親を識別するこのころは、つねにお母さんのにおいの届く場所、声の聞こえる場所に赤ちゃんを寝かせるようにしましょう。

また、母親に痛みや悩みごと、緊張感などがあると、子どもは敏感に反応して「見捨てられる不安」を感じてしまいます。

子どもの前での夫婦喧嘩は、心理的な虐待に分類されています。母親は不安定になり、子どもも両親の不仲に恐怖を感じ、乳幼児期ではストレス経路に傷を残すかもしれません。

「SOSサイン」→泣きわめく、わがままをいう、暴れる、しがみついて離れない…というように、親の注意を喚起しつづけ、なんとしてでも親との関係を維持しようとするのです。

「手のかからない子」→SOSサインに気づいても、無視したり、拒否するような親に対しては、それ以上拒否されないよう、抱っこをせがむような愛着行動や、親の注意を喚起するような感情の表現を、最小限に制御するようになります。

 →本来は母親に対して向けられるべき愛着欲求を抑圧している子どもは、多くの場合、何かしらの依存対象を必要とします。※11

 赤ちゃんが泣くいちばんの理由は、不安缶なのです。「オムツが母乳の催促」だと決めつけ放っておくと、「泣いても無駄なんだ」と学習して、泣かなくなってしまうのです。(「サイレントベビー」へ)※12

「スキンシップ」

→近年では、新生児に触覚刺激を与えると、新生児の脳は刺激を受けた部分に一致する脳領域だけではなく、反対側の脳領域や、周辺の脳領域も活性化することが、京都大学の明和政子先生らの研究で明らかにされています。

触刺激によって脳の発達が促進される可能性があるということです。

さらに、体をなでるタッチケアによって発育がよくなる、入眠までの時間が短縮する、赤ちゃんのストレスホルモンが減少するなどの報告も見られ、触覚刺激は、成人とは比べものにならないほど、赤ちゃんに大きな効果をもたらします。

とくにお母さんに抱っこしてもらうことは、子どもの愛着を育み安定させる、非常に有効な手段のひとつです。

「抱きぐせ」という言葉は、愛着食害を増やした最大の原因だと私は思います。スキンシップは愛着を育む最も重要な要素であり、対人関係のぬくもりを伝える行動としても、とても効果的なものです。

新生児期、あるいは2~3歳を過ぎても、子どもが近寄ってきたとき、不安そうなとき、甘えたいときは、いつでも抱きしめて、ふれあう時間を増やしましょう。

子どもが困ったときの助けが愛着です。

[とくにふれあいが必要なシチュエーション]

・授乳中 ・泣いたとき ・ぐずったとき ・不安そうなとき ・甘えたそうなとき ・子どもが近くに寄ってきたとき※11

「愛着障害」…何らかの理由で愛着を結べなかった母子関係に生じる問題のこと。

 子どもは愛着行動を示せない(8割という調査結果も)だけでなく、正常な心の発達も望めなくなります。

 本来、安全基地であるべき親が恐怖を与える存在になってしまったら、それは子どもにとって解決不可能なパラドックスになります。混乱のまま成長せざるをえません。

 混乱した愛着行動は、幼児期から児童期にかけては攻撃性として、思春期から青年期には精神疾患の症状としてあらわれやすく、その症状は多岐にわたります。なかには、子が親の世話を焼くような「親子逆転」の傾向も少なくありません。※11

 『DSM-Ⅳ-TR精神疾患の分類と診断の手引き』(アメリカ精神医学会の診断基準第四版)

によると愛着障害は5歳未満に始まった対人関係の障害。

 原因となる「不適切な養育」

 ➀安楽、刺激および愛着に対する子どもの基本的な情緒的欲求の持続的無視

 ②子どもの基本的な身体的欲求の無視

 ③主要な世話人が繰り返し変わることによる、安定した愛着形成の阻害

「見捨てられる不安」は、精神疾患のひとつである「境界性パーソナリティ障害」の代表的な症状でもあります。

 境界性パーソナリティ障害は、「適切な養育」を受けた子どもの行きつく最もやっかいな精神疾患とも捉えられています。

 自覚症状は抑うつ感が中心ですが、感情がつねに不安定で依存的であり、安定した対人関係を築くことができません。

他人に頼ろうとする気持ちがかなえられているうちはいいのですが、かなえられなくなると豹変します。他人のちょっとした言葉や態度で「自分が見捨てられた」と思い込んで激しく落ち込んだり、逆にその人を激しく攻撃したりします。※11

[発達障害]…病気ではないので治りません。また、生まれつきの性質であるため、育て方などの環境的な要因ですべて決定されるわけではありません。

 しかし、生まれながらに育てにくい状態の子どもは、両親から身体的虐待などのを受ける危険性が2.5~3倍以上高いため、その症状は修飾され、診断基準から外れたような行動も見られます。

 ただし、純粋な発達障害の場合には、嘘はあまりつきません。もしウソをついたとしても、すぐにばれるような見え透いたウソが多く、周囲の人にはすぐにわかります。

 一方、「適切な養育」を受け、誰からも守ってもらえなかった愛着障害の子どもは、見捨てられないかの確認のため、あるいは周囲をコントロールするために、非常に高名な嘘をつき、あるいは他人のせいにしてしまいます。※11

【脳】

「脳」は、胎児期から3歳までに約80パーセントが完成すると言われています。そのため、3歳までにつくられた脳が、その後の人生を生きていくための基盤になります。

古い脳といわれる「大脳辺縁系」は出生後に急発達し、3歳ごろまでの時期にかなり完成に近づきます。脳の「大脳辺縁系」という部分には、喜怒哀楽などの感情に関わる「偏桃体」や、学習能力やストレス耐性に関わる「海馬」が存在します。※11

 「髄鞘化」が脳の神経の発達です。

 生まれてすぐの脳内では、おもに「脊髄」と「脳幹(延髄、橋(きょう)、中脳)」間で髄鞘化が起こっています。

 脊髄…皮膚や筋肉と直接連絡する末梢神経をつかさどります。

 脳幹…首から上の筋肉を制御したり、呼吸を制御したりする脳神経の中枢がある場所です。

 そのため、新生児の身体運動は「原始反射」と呼ばれるものが主体になります。※11

[「白質」「灰白質」]

これらの量が、脳の健やかな発達のひとつの目安になります。

「白質」…頭頂葉の表面下にある神経線維の層。3~4か月になると髄鞘化が進みます。

「灰白質」…白質に対して神経細胞の集まった部分。大脳表面や脊髄の中心は灰白質でできています。

生まれてすぐに親から離され、適切な養育を受けられなかった子どもは、一般の家庭で育てられた子どもに比べて、白質と灰白質の量がともに少ない傾向にあると報告されています。

また、比較的、発達障害が多いことも知られています。「不適切な養育」を受けると、脳の発達に必要な刺激が不足しがちなことがわかります。

[摂取エネルギー]

摂取したエネルギーの約2/3が脳の発達に使われます。脳が成熟するためにはエネルギーの補給が重要であり、カロリー不足による頭囲成長の遅れは、時として発達の遅れにつながります。

DNAの増加やコレステロール増加のピークに栄養不足は脳の発達を阻害します。※11

【熱中症】

 クーラーのきいた部屋で育った子どもは、体温調整が苦手になることがわかっています。熱中症は依然は、北半球の涼しい土地で育った人々に多い症状でしたが、日本では1980年以降に生まれた子どもたちに多く見られるようになりました。

 熱中症になりにくい体にするためには、2歳6ヵ月までに暑さを経験させることが重要になります。

 汗をかくための能力汗腺の数は、2歳半までにいかに暑さを経験したかによって決まるからです。※11

b.1ヵ月後との変化

【0か月】

・生まれた瞬間は生物学的に必要な機能をほぼ備えて生まれてきます。

 聴覚…感覚器のうち、最も完成度が高いのは聴覚です。言語野の発達は在胎30週ごろから始まり、出生時にはほぼ80%が完成しています。

 嗅覚…嗅覚も鋭く、新生児の嗅覚は、一般的なにおいに対しては成人とほぼ同等と考えられています。母子同室にしていると、6~10日で自分の母親の母乳と、ほかの人の母乳のにおいをかぎ分けます。

 生まれてすぐの赤ちゃんを母親の胸の上に置くと、30分ほど時間をかけてモソモソと動きながら、乳輪のモントゴメリー腺から分泌される物質をおそらくかぐことによる効果で、母親のお乳を吸いにいきます。

 無痛分娩をすると嗅覚が鈍ることも(医師による)。

視覚…視覚はまだ完成には遠く、生まれたときの視力は0.03程度です。しかし、コントラストの強弱はわかり、赤ちゃんを産んだお母さんの乳頭が色素沈着して色が濃くなると、赤ちゃんは視覚でも見つけやすくなります。

触覚…五感の中で最も早く発達することが知られています。在胎9週頃から、お母さんのお腹の中で、指を口に入れたり、顔や身体、臍帯(へその緒)に触れたりしています。触れる場所は、頭部から足のほうに移動していきます。指しゃぶりは、触れることと触れられることが同時におこなわれる大切な触覚刺激です。

味覚…味覚に関しては、本能的に甘いものを好み、苦いものを嫌います。甘いものは栄養価の高い、生体にとって有益なものであり、苦いものは生体にとって有害なものだと判断するからです。また、新生児は、成人の倍の感度で苦みを識別できるという調査結果もあります。自然界では、毒を識別する感覚が生きるために必要だからです。

しかし、この味覚反応は、成人が大脳皮質で感じる反応とは異なり、生きることに必要な機能をもつ脳軸由来の反応です。そのため、生後3~5ヵ月で弱くなっていきます。※11

・感覚のエラー

[難聴]➡「新生児聴覚スクリーニング」と呼ばれる聴覚検査制度が導入

 (生後6ヵ月から1歳半の発見で)補聴器などで言語発達の遅れは減っています。

[斜視]➡生後6ヵ月ごろに発見すれば、改善する見込みは高くなります。※11

・脳を調べた研究から、生後2~5日の乳児でも視線が合っているかどうかを識別できます。妊娠25週の胎児でも顔に似た形状を好むことが知られています。つまり、「顔」への志向は、生後の視覚体験とは関係なしに、生得的に備わったものなのです。※8

・新生児は、お母さんの胸部のにおいを、お母さん以外の人と区別することができます。胸部のにおいが羊水のにおいと似ているからです。(『Four month-old infant’s long-term memory for a stressful social event』Montirosso K.ら 2013)

 お母さんも、30分ほど授乳すれば、自分の子どものにおいを識別することができます。

 お父さんは、少なくとも3時間以上かぎ続けると識別できるようになります。※8

【1ヵ月】

・お母さんが赤ちゃん(生後1、2ヵ月)に笑顔を与えてやるだけで、共感的(共感性)な感情がめばえてくる。アンリ・ワロン(Henri Wallon1879~1962:精神科医)は子どもが親との情緒的なやりとりを通じて、こころやコミュニケーションを発達させていくことを発見しました。喜びの分かちあいがコミュニケーションのはじまりだと指摘しています。そしてまた、子どもが親とのやりとりから、自己と他者の関係性を知ることも、ワロンは発見しています。※9

・「新生児模倣」・・・脳の発達、そして愛着形成に欠かせない要素です。赤ちゃんのお母さんの表情のマネ。

 コツとしては赤ちゃんが目を覚ましてよく動いているときと見計らって、まず目を合わせ、顔を動かして追視してくれるかどうかを見てみます。

追視をしてくれたら、舌を出してみます。

舌を見てくれたら、3秒ほど舌を出して、ひっこめます。それを繰り返していると、赤ちゃんもマネをしてくれるようになります。※11

・産後うつ病の母親に表情がなくなると、子どもも表情なく経過してしまうことがあります。生後2ヵ月ごろまでは顔のマネをしやすい時期なので、育児をするうえで表情豊かであることが大切です。※11

【2か月】

・2ヵ月前後が神経細胞の増加によるDNA増加の第2ピーク。爆発的にエネルギーを必要とする時期。※11

・クーイング…言葉の発達のはじまりで「あー」や「うー」などの母音の発音ができるようになります。赤ちゃんのクーイングを親が「あー」と「返信」することが大人の役目。まだしばらくは一方通行ですが、こうした地道な積み重ねがコミュニケーションと、何より信頼関係の基礎を作るとされています。(他には、視線を合わせたり、おもちゃを鳴らしたり、話しかけたり…最初は「発信」のみの一方通行も)

最初のうち、赤ちゃんは「あー」と出している声が、自分のものでは気づいていません。※8

・この時期はまだ、自分の身体運動と五感が、脳の中で一致していないのです。視野に飛び込む自分の手や周囲の物体も、視覚情報としては脳に届いているけれど、それがまだ「自分の手」や「物体」だとは認識できないません。※8

・モロー反射(Moro reflex)…脳の回路が成熟する過程で一時的に生じる、原始反射の一つ。オーストリアのモロー医師が発見。

お風呂に入れるときや、大きな物音がしたときに、赤ちゃんが何かに抱きつくように両腕を広げてあげる様子のこと。大脳皮質の神経細胞が、大規模な同期活動(脳のパーツとパーツが互いに繋がり、その回路が連動するときに)をすることによって生じます。脳回路が未熟で、機能ごとに細分化されていないために、脳全体が一斉反応してしまい、「けいれん」にも似た単純な反射現象が生じるようです。新生児から3ヵ月頃まで見られますが、その後はだんだんなくなって、徐々に細やかな動作ができるようになります。※8

【3ヵ月】

・ワロンによると、3、4か月になると、お母さんに対して、そばにいるだけではなくて、自分が望むこと、喜ぶことをあれこれしてほしいという要求がはじまります。いちばん多いのは、だっこでしょうか。※9

・相互作用で信頼を深める時期が3~5ヵ月です。3ヵ月に入ると、視覚もかなり発達し、聴覚よりも優位になります。そばにいるお母さんに強い信頼関係を結びはじめ、母親が笑顔を見せると、応えるようにして笑顔を返すようになりよく声を出して笑います。

 周囲の人の表情などもよく見るようになり、母親とそれ以外の人との区別がさらに強くなる時期です。

「いないいないばあ」…好奇心が盛んになってくるこの時期にすすめています。

目の前から消えたお母さんが、一瞬にしてあらわれるこの遊びは、「お母さんはいなくならない」「困ったときには、いつでもあらわれる存在」ということを学ぶ訓練にもなります。もし赤ちゃんが不安になって泣いてしまったら、すぐにやめて、やさしく抱っこします。

このころは、それまでの受動的な反応とは異なり、赤ちゃんのほうから働きかけるようになります。見つめ合いが顕著に増え、赤ちゃんは顔の表情を変えて、相手の表情を引き出そうとします。それに応えてお母さんが反応すると、さらに活発になっていきます。

5ヵ月ごろまでは、相互作用を高めるために大切な時期です。その期間は、できるだけ赤ちゃんのそばにいて、語りかけ、ふれあい、たくさんの関わりをもつようにしたいものです(「たかい、たかい」は首がすわったら)。※11

・生後3~4か月になると、咽頭が下がってきます。声を出すためです。※8

・クーイングの「あー」などを親が反復しているとしだいに認識し、3~4か月ごろには親が返す声を聞いて「あ、お母さんは私の声のマネをしてくれている」と気づくようになります。※8

・「クーイング」と呼ばれる、アウアウ、ウーといったようなかわいらしい発声をするようにもなり、声も大きくなります。これらの笑顔や発声も、大人が反応することで、さらに活発化します。

 笑顔や「なあに?」などの反応が返ってくると、赤ちゃんは自分が大切にされている存在と感じます。こうしたことの積み重ねが、愛着を育み、自己尊重のはじまりとなります。※11

・マザーリーズ(motherese、母親語)…老若男女にかかわらず、乳幼児に声高に話かける傾向は、世界中で共通に見られる。実際、音程の高い声で話しかけると、乳児はよく反応するのです。※8

・三か月頃の赤ちゃんが笑うのは、楽しいからではなくて、ただの反射です。でも笑いのレパートリーは、周囲の大人が接する時間に比例して増えていくと言われています。つまり対人関係の豊かさが笑いの多様性と比例するのです。※8

 生後3か月の子どもは、隣の子が泣いたら、自分もつられて泣いてしまうこともあります。心理的に一体なのでしょう。※8

・3ヵ月は「シナプス」が50兆から1000兆個ほどまで増加します。

 敏感期であり、「シナプス」が増殖したあと、脳の中でシナプスの取捨選択がおこなわれます。外部からの刺激を受けたシナプスだけが残り、刺激を受けなったシナプスは、「この環境で生きていくためには、必要のない機能」と判断されて消えていきます。このような取捨選択期間。ヒトは「敏感期」を経て、環境に適応して生きていくための、効率のいい神経回路を確立するのです。※11

・クロスモーダル連合(cross-moodal perfomance)…五感がばらばらに働くのではなく、連動して全体として強調すること。異なる感覚器からの情報を連合(主に前頭葉が担っている)することは、脳にとっては難しい仕事。※8

・見えるものに自分から手を伸ばすようになりました。視覚と触覚の情報が統合できるようになったから、その情報に基づいて、脳が身体運動(腕の動き)を指令して、見たものに触れることができる。※8

・名前を読んだり音を立てたりすると、こちらに目をやるようにもなりました。視覚と聴覚が統合されたらから、身体運動(首の動き)を精度よく制御することができるようになった。※8

・また2か月の頃と比較して、2か月では「おもちゃの見え」(視覚)や「音の聞こえ」(聴覚)の知覚はあっても、「目の前に見えるおもちゃが音を出していること」(視覚+聴覚)はわかっていません。※8

・「この世界は3次元だ」ということに気づきはじめる。

 目の網膜は2次元の視覚情報でしかありません。自分の体の移動によって変化することや、手を伸ばすことで、3次元情報が縮約された後の二次元情報だということに気づき、「元の3次元世界」を2次元情報から読み解き、脳内で復元する作業ができつつあるということです。

 赤ちゃんは自分の鼻を、絶対的な空間座標の原点とし、これを参考にしたときに相対的に動く世界の「見え方」を理解していくとも考えられます。※8

・赤ちゃんは自分の体を使った経験を通じて、光信号足る「見え」の意味、つまり「世界」の有り様を、だんだんとつかんでいくのです。※8

・手順やルールを覚えるという「手続き記憶」ができはじめている。「手順」を場所や時間に絡めながら、自然と覚えるのです。※8

【4ヵ月】

・ワロンによると、4・5ヵ月になると、自分が望むことをしてくれるだけでなくて、お母さんも、それを喜んでしてほしいと思いはじめる。(ワロンの有名な発見)ここにはじめて、喜びを分かちある感情が発達してきます。喜びある経験を豊富にすればするほど、子どもの感情のなかに、他者と悲しみを分かちあう感情が発達してきます。

他者を思いやる感情は、相手と悲しみを分かちあうというものです。しかしそれは、喜びを分かちあう経験をしないことには、絶対に発達しない。ワロンはそう言っています。    

子どもの本能的な動きや欲求に、お母さんが同調してあげる。そうすると子どもは、同調しているお母さんに反応する。その反応に今度は、お母さんが返す。そういうところから、信頼の感情や人間関係に必要な人格、そして社会性の基盤が育っていきます。

子・母のはいはいの追いかけっこ。

ワロンによると、喜びを分かちあうことから、人間はコミュニケーションをはじめることができる。

また、ピアジェ(Jean Piaget 1896-1980:スイスの心理学者、20世紀において最も影響力の大きかった心理学者の一人)も言っています。親と子が喜びを分かちあることが大切だ、そしてそれがコミュニケーションの基盤を育てるのだと。

子どもは大人に喜ばせてもらうと、また喜びたくなります。そして、大人の反応を引き出して、また喜ばせてもらうという、主体的庵活動をはじめるわけです。大人が子どもの期待に応えられるようないい反応をすればするほど、子どもの情緒的な表現が豊かになっていくんです。そして、情緒的な感情表現が豊かになればなるほど、人間的な自己形成が加速してくる。※9

・生後4か月までには親と視線が合うことをはっきりと好むようになるとわかっています。※8

・「身体の輪郭」を認識…私たちが「触った瞬間に触った感触を得る」のは、経験に基づいて、そう認識するように脳がさかのぼって補正をしているから。赤ちゃんは生まれたときには、自分の体の形を知りません。くすぐられて、もじょもじょとする感じは不快なようですが、なぜくすぐったいのか、その感覚が体のどこからくるのかが、まだわからないのでしょう。

「身体の輪郭」を認識することは、自分とそうではないものを区別すること、つまり自分と他者との境界がわかることへの第一歩。こうして、自他を区別しながら、「自分」という存在を確固たるものにしていくのです。※8

・移行現象…この頃の乳児は、一体感を覚える対象が「自分」や「親」以外のものに広がり、人形やぬいぐるみなどにも興味を持ち始めます。自分のこぶしや指をしゃぶっていた娘が、自分以外の対象物への関心を移した証拠として何でも口に入れて確かめています。

親からの独立の第一歩です。※8

【5ヵ月】

【6ヵ月】

睡眠においてもねんねトレーニングができる時期。また水が飲めるようになる時期。

・6ヵ月前後は脳内で細胞成分として重要なコレステロール増加のピーク。※11

・6ヵ月から1歳までは、最も感覚能力(視覚、聴覚など)が高まる時期※11

・生後6ヵ月くらいから、はいはいができるようになります。自分の意志で移動するようになります。生後6ヵ月から2歳くらいまで、継続して見られる行動…ときおり、うしろを振り返りながら、進もうとします。そのときに、振り返ったらいつもは母親が自分をみていてくれたという安心感を与えてあげること。それが大切なんです。

またマーラー(Margaret Schoenberger Mahler 1897-1985)によると、生後6ヵ月から2歳くらいまでに子どもは、お母さんのいない世界で浮気を楽しむと言ったのです。まわりを探求して楽しんでいるけれど、お母さんから見放されたくはない。

このころ赤ちゃんが振り返ってもお母さんが知らん顔をしていると、子どものんかに見捨てられることへの抑うつ感情や不安が育ってしまうんです。うつ病や不安障害といったこころの病気の、もとになる感情がここにあると思うんです。

お母さんが見守っていることを認識して、安心して、だんだんお母さんから離れていくんですよね。それが健康な分離・独立です。※9

・姿を見せなくなると、泣くようになる。

 「時間」という概念を獲得しつつある証拠。「先ほどまでいた親が今いない」という時間比較ができているから。

「いないないばあ」も6ヵ月以前「見えない」=「存在しない」が、以降手の下に相手の顔が隠れていることがわかるのです。※8

・6ヵ月ごろの赤ちゃんはサルの顔の違いを認識する能力を持っていますが、その能力は、何もしなければ9ヵ月ごろには失われます。もし母親があまり構わず、とくにミラーニューロンが活発化するようなトレーニングをせずに放置されると、わずかな表情の変化による心の変化を識別する能力が低下する可能性があります。(※ミラーニューロン…観察しただけでも直接同じ体験をしたようなイメージをもつことができます。)やさしい笑顔で語りかけ、歌いかけてほしいと思います。※11

・絵本の「読み語り」

 ミラーニューロンを働かせるには、擬音語・擬態語の多い絵本の「読み語り」も有効です。「読み語り」を聞いているときの子どもの脳は、感情の動きをつかさどる大脳辺縁系が活性化することがわかっています。

 また「読み語り」をする母親の前頭前野付近も活発に動きます。「読み語り」をしているとき、親は聞いている子どもの気持ちを想像しながら、表情や反応を見ながら読み進めていくからでしょう。前頭前野が活性化すると、気分が落ち着き、イライラしなくなります。このような相互作用は、親子のつながりを強める非常に有効な手段となります。

 早期教育の有効性も説かれていますが、それよりも親子のコミュニケーションを重視してほしいと思います。※11

・マネをするようになる。

三か月以内の赤ちゃんはマネをしません。マネは自分の脳に「外部世界」を取り込むのにとても重要です。マネにも段階があります。もしわが子が「なかなかマネをしないな」と思ったら、まだマネへの意欲がないか、その子にはまだ難しい段階のマネをさせようとしているかもしれません。※8

【7ヵ月】

・生後半年頃までには、(音楽の)リズムを習得します。しかしまだ左右の手で別々の動きができません。脳の両半球の機能分離が不充分だから、ほぼ左右対称の動き。※8

・尿意と睡魔は、赤ちゃんにとって不快な感覚なのです。おしっこをする前や、している最中に泣くのです。眠くてウトウトするときにも、赤ちゃんはぐずって泣きます。※8

【8ヵ月】

・ハイハイをはじめる前は、目の前のものだけに興味があったのに、ハイハイができるようになった途端に、遠くにあるものに興味をもつようになったことです。移動手段を手に入れた瞬間に、自分の可動世界が一気に拡張し、興味の範囲も広がる。

・耳にした言葉の吸収力も強くなる時期に差しかかっています。この時期に大切にしたいことは、赤ちゃん言葉ではなく、正確な言葉を使うこと。※8

【9ヵ月】

・「握力把握」(全部の指とてのひらを使って握る)から「精密把握」(親指と人差し指を対向させて「つまむ」という動作)へ※8

・共同注視…相手が興味を持ったもの(対象)に、自分も興味を向けること。こうした問題の意識の共有は、協働作業を行うための基礎となります。※8

【10ヵ月】

■保育園■

 週三回ほど、保育園に通わせるようにしました。いろんな人の価値観に触れさせ、「わが家だけが世界のすべてではない」と伝えたいと考えたからです。※8

【1歳】

 その子に合わせたコミュニケーションをこのころから、知能や体力など、赤ちゃんの個人差が大きくなってきます。

 1歳を過ぎるころには、脳の基礎的な神経回路はほぼ出来上がっています。生まれたときに380g程度だった重量も、800~900gほどになっています。※11

・長期記憶…この記憶の働きも、シナプス形成によるものです。シナプスには、繰り返しの学習によって使われたシナプスが残る「長期増強」と、運動の練習中などに失敗して、そのときに使われたシナプスが消えていく「長期抑制」の2つの形があります。

 繰り返しの学習により形成された神経回路は、わざわざ考えたり思い出したりしたりしなくても、条件反射的に想起されます。

 五感によって得られた刺激も長期増強となります。

 また、感情豊かな子どもは、自分の好奇心のもとにさまざまな遊びをして失敗を繰り返しながら、長期抑制によって器用さや運動能力を獲得していきます。※11

・1歳すぎになると、今度は歩きはじめます。※9

・10か月から1歳を過ぎたあたりから、立ち上がってあるけるようになってきます。※11

・この時期までに愛着がきちんと結ばれている赤ちゃんは(マーラーの浮気は6ヵ月のはいはい期に出てきている)、さまざまなものに興味をもち、好奇心のままに探究を始めます。

 一方、「母性脳」になっているお母さんは、恐怖を感じる扁桃体が安定しているので、子どもが少々冒険しても不安をあまりもたなくなります。子どもの自主性を尊重でき、困ったときにだけ手を差し伸べるように待てるようになっていくのです。※11

・私が見ている視線の先を目で追うことはありましたが、「指差し」は、対人的に見れば逆のベクトルになります。

・家族そろって一緒に食べると喜びます。いわゆるヒトらしい社会性が出てきています。

・そもそも脳は、自ら決断して、積極的に行動することによって成長しますし、人間にとって受動的に動いたときの快感は、受動的な行動よりもずっと強いものです。能動的に行動するほうが、脳が強く活性化する。

 筆者はできるだけ欲望通りにさせているよう。

IQが考案された元来の目的は、できるだけ環境や教育や年齢によって影響を受けないような、安定した指標を作ることにありました。※8

・この時期は言葉による説明の内容は記憶に残りにくいので、「言って聞かせる」ことは難しい時期です。※11

【1歳1ヵ月】

 この頃の幼児は睡眠することで覚えた単語を汎化させていきます。※8

【1歳2ヵ月】

 ベイズ推定…何かを(2~3回)繰り返すうちに、自分の中で確信を深めていくプロセス。利点は、事象の表面にとらわれないで、その裏にある根本のルールに気づくことです。1回の経験で結論に気づくことです。1回の経験で結論に飛びつかないで、「保留する」ことが、ベイズ推定の本質です。思いこみによる早とちりも生み出します。

人工知能は桁違いに多情報量から学び、人は桁違いに少ない訓練量で、立派に上達する。

ベイズ推定は私たちの心の成り立ちそのもので、複雑な経験則の綾から、独自の世界観を紡ぎ出し、自我や個性を確立させていく礎です。※8

【1歳3ヵ月】

・モノマネは、社会のルールを自分の中に取り入れていくための最初の一歩です。

 マネをするためには

 ➀自分と他人の区別ができることが大前提。

②相手と同じ表情をしようと思う意図も必要です。

③顔の筋肉をどんなふうに動かしたら、相手と同じになるかを知っていることも必要です。※8

・予測(先手を打つこと、予測して対処すること)

 記憶という脳の機能も何のためにあるのかと言えば、その知識を本来に生かすためです。本格的な脳の使い方をはじめたのです。

 ➀野生の世界では、食料や外敵や繁殖などに備える機能を持ちます。

 ②ヒトでは社会文化やコミュニケーションを築く土壌にもなっています。※8

【1歳4ヵ月】

 1歳4か月~2歳…子どもは分離不安を感じるようになります。自分勝手にあっちこっちに行っていたのが、急にまた母親に接近して、ベタベタしてくる。再接近期がくるんです。母親を失うことのおそしさに、本当の意味で気づくんですね。

 「ちゃんとみているよ」「心配いらないよ」という思いを、いつも子供に伝える。子どもが、見捨てられることへのおそれなんて抱かなくてすむように。※9

【1歳半】

 1歳半以降になると、「手続き記憶(長期抑制)」や「記憶」をつかさどる部位の発達が進みます。※11

【幼児期:2歳】

エリクソン心理学だと幼児期(2~4歳)とし危機的な主題は「自律性」を身に付ける事。セルフコントロール。※9

 自律には2つの意味があります。

➀他からの独立「能力の発達」「活動範囲の広がり」…自我の芽生えとなります。

②内部的コントロール「生まれて初めて命令、禁止が加わる…しつけ。

 この子どもの発達、活動範囲の広がりの時。初めて母親の圧力が加わり、この2つの力の調整(自律)が必要となります。直立歩行、言語の獲得…これらは社会的に人間らしくなったことで、ここに母親のしつけ(排尿)が社会的に圧力となって加わります。

 親に守られ、親の一部のようになっていた自分から乳離れし、一人の人間としての自分へ移行し始めるのがこの時期。同時に、躾(しつけ)という名の、親からの禁止、命令、圧力、制限が加わり始めます。第一課題は排尿調整。

 この時期に大切なのは、親のペースに合わせるのではなく、子どものペースでやらせて待つこと。そして、できたら一緒に喜ぶこと。すると、子どもの「自分でできた!
」という喜びと自信になります。

 他の子と成長を比較して早く早くと攻め立てたりすると、「恥」の意識や、自分は十分に発達していないのではという「疑い」が発生します。※10

・「完全な助け」から「支援」への時期。

 2歳ごろまでを「完全な助けが必要な時期」とすると、2歳以降は「支える時期」に入ります。見かけ上の主導権は子どもに変わります。※11

・2歳というのは、赤ちゃんの歯がはえそろう時期です。経済や医学が発展する以前、葉が生えそろう2歳になる前に母親が亡くなると、(食べ物を食べる関係で)生きていけない時期が長く続きました。※11

・できるだけ感情を言葉にして表現させるようにします。そうすることで、前頭前野が発達して、感情と理性の統合を促し、セルフコントロールと自己表現を学習します。

 よくないのは、お母さんが何でも先回りしてしまうことです。自我が未発達の段階では、子どもは「お母さんががそいうなら、そうなのだろう」と思います。※11

・「体性感覚野」…聴覚、味覚・嗅覚、触覚、視覚などをつかさどる。

 「運動野(前頭葉後部)」…全身の筋運動を起こす電気信号の出ていく。

 出生時にはすでに髄鞘化が始まっていて、1歳半ごろをピークに発達し、約2歳ごろに完成します。

「視床」「基底核」「辺縁系」の一部も、誕生後1年から2年で髄鞘化されますので、ヒトの脳の基本的な部分の完成は、ほぼ2歳ごろと考えてもいいでしょう。※11

【排尿調整】

 幼児期の第一課題。

 フロイトは「肛門期」と名づけました。

 ゆとりがなければ、「しつけ」が親からの罰になります。

 仮に母親が排尿させようとする緊張で「保持」が勝ち、便器をはずした瞬間に「放す」が負けて、放尿してしまう。この「こじれ」が、母親の厳しい罰となり、子どもは排尿失敗を繰り返す。※10

・「いやいや期」…母子分離不安が半減する2歳を過ぎたころに第一反抗期に突入します。いわゆる「いや」「ダメ」「自分でする」といいはじめる時期。

 2歳後半から3歳のころは、言語に関連した脳領域の神経回路が増加する時期なので、言葉の発達が急速に進みます。

 母親から離れ、母親以外の友達や兄弟と、自己主張したりされたりしながら、我慢する事も覚え人間関係の基礎をつくる時期に入っていきます。

この時期から、子ども同士で全身を使った遊びをすることで、さらに発達が進みます。

子ども同士の衝突や喧嘩はしょっちゅう起こるでしょう。このときの関り方もとても大切です。※11

【3歳】

・三歳まではこどもの発達にとって大事な時期のようです。この時期に、「愛されている」「大切にされている」との実感のもとに安心して他者との信頼関係を育むことは重要のようです。しかし、それが母親でなくてはならないというわけではないようです。

 むしろ、忙しさや不安の中で、しっかり向き合う時間が取れなかったりするくらいなら、プロのサービスを利用して心穏やかに過ごすほうが、親にとっても子どもの発達にてっても、好ましい影響を与えられるのではないとも考えられるようです。※1

・育った環境と刺激に応じて、3歳までの間に生まれ持った脳の神経細胞数を、3割にまで減らすようです。※8

・三つ子の魂百まで…脳の神経細胞の数は「おぎゃー」と誕生した瞬間が一番多くて、三歳になるまでに約70%の神経細胞を排除します。その後、その生き残った30%は変化しません。健康ならば100歳を超えても、この30%を保持し続けます。※8

・三歳児神話…数えの3歳なので、完全な助けを昼用とする満2歳と考えたほうがいいでしょう。※11

エリクソン心理学によると3~6歳を括りとして、イニシアチブ(自発性)と罪悪感が対立する時期。

・満3歳を過ぎるころから、前頭葉が急速に発達し、理性が発達。そして自我が芽生えはじめます。

満3歳を過ぎる頃から、幼稚園に入る時期でもある。

・また運動・言語・想像の発達する時期でもある。

➀運動の発達

歩ける、騒げることで活発になる。故に、すごい勢いで両親や大人・友人に身体ごとぶつかる。大声でどなるなどに繋がる。

②言語の発達

 大変な弁舌家になる。ことごとに質問して大人を困らせたり。

③想像の発達

 空想と現実の混同。好奇心、冒険心、探求心が旺盛で、活発的になる。

→これらにより運動能力の脅威的な発達は、能力を超えた目標(想像によって抱く)へと突進させる。

・「取り入れ」が始まる

「ママゴト」…5~6歳くらいから始まり大人の世界をかいまみる。

「エディプス・コンプレックス」…異性の親に愛情を持ち、同性の親にライバル意識。ライバルだけど嫌いになれず、パパになろうと思い取り入れる。フロイトの説。

「同一視」…他人の持つ特徴を、無意識に自分に取り込む。映画、テレビを見て、自分が主人公になったように思いこむ。

・「イニシアチブ」に対する「罪悪感」の説明として、「エディプス・コンプレックス」が分かりやすい。フロイトはすべての神経症は「エディプス・コンプレックス」と考えました。

「同性の親」を憎みこれが取り入れに繋がるが、逆に失敗した場合この大それた企てが、不安と自責となり罪悪感につながる。

一方、夫婦間の仲の悪さがモデリングの対象を失う事となる。

モデルを失うと、子供は「イニシアチブ」をとれなくなります。モデルがないので新しいことをしようとする時、「不安」「焦燥」「イライラ」が強くなる。当然「無気力」「逃避」「無口」「親子の断絶」「消極的」「孤独」「自閉」といった方向に進む。※10

【児童期:4歳】

 4~7歳を児童期とし、危機的な主題は「自主性」、積極性、主体性、目的性をはぐくむこと。※9

 また「生産性」と「劣等感」を対立主題とする時期でもある。

 大人になる準備段階。空想の世界に別れを告げ、現実の世界と向き合う。

 この時期の前期は「想像の世界」と「現実の世界」をごちゃ混ぜにして行動します。イニシアチブの時期で憧れや目標(「電車の運転手」「おまわりさん」)を持つも、これも限界があって「何か役立つこと」「本当のこと」をしたくなります。この時、文明は「学校」という制度を作り、高度な技術―対人関係(コミュニケーション)、生産のテクニックとして、文字、数の扱い方を教えることにしました。

 遊びを通じて、皮膚感覚を通して人との関わりを学び、自分は何が出来るか役割を認識し始めます。エリクソンは「生産に参加していないエネルギーのはけ口」として「遊び」を大人になるための予行演習として位置づけました。そして、それを「自我のオーバーホール…に分解掃除」と言いました。子どもはそれを遊びの中で行います。

 遊びのできない子どもは、➀「遊びの崩壊」と名づけました。この遊びの崩壊は、自閉ぎみになり、退行、逃避となり、指しゃぶり、夜尿、チック、登校拒否の症状を作ります。②他人を否定する家族や仲間に囲まれると、集団の中で高いところから他人を見下すようになり集団生活が営めません。

 生産性としては、全員が主役の遊び方から、主役・脇役のある遊び方へと変化する。友達との間で調整、交渉することを学ぶ。人とぶつかっていく中で、耐える事(我慢)の大切さや仲直りの仕方がわかる。

 生産性に寄与出来ないと劣等感になる。親の厳しすぎるしつけや冷たい対応が原因となる。この時期は心が内面に向くので、冷たい親が、いつか自分を捨てないかという不安。厳しすぎるしつけを受けた子どもは自分で考えることもできないので、勉強など頭に入らずに遅れてしまいます。それが劣等感を作り、「自分は駄目なんだ」「何もできないんだ」という感情になり、だんだん進行すると固定観念ができてしまう。そして家出(現実逃避)・登校拒否・病気への逃避に繋がる。

 フロイトは、ここまでを成長の全段階、このあとはこのくりかえしだと言いエリクソンは、ここまでは他者依存。ここから世界は広がると言いました。※10

【6歳】

 「脳梁神経」(右脳と左脳を結ぶ)

 生まれたばかりのころは、未発達で、左右はほとんど分離しています。6歳までに完成すると考えられています。※11

【学童期:7歳】

 7~12歳くらいとし、危機的な主題は「勤勉性」の基礎作り。友達とのさまざまな共有経験。※9

【10歳】

 大脳皮質は髄消化が遅く、なかでも前頭葉と側頭葉ではとくに遅いため、髄鞘形成が完成するのは10歳以降になります。その後も、神経の絡みは増えていき、20歳過ぎまでゆっくりと成熟は進みます。※11

【思春期:13歳】

 青年期ともいって、13~22歳で、危機的な主題は「アイデンティティ」の形成。自分を見出せるか。※9

 「自我同一性」と「役割の混乱」を対立主題とできる。

自分は何者か?自分は何ができるのか?1人でやっていけるであろうか?周囲の中での自分の位置や役割を確認しながら「自我」(「アイデンティティ」「自分らしさ」「身分証明書」)を作り始める。親も子も必死な時期。いわゆる思春期、反抗期。

 子どもの頃は基本的存在で、そこに「自尊心」という家を建て、存在証明をしていく。また、家族(両親)も、社会も一人立ちする事を望んでいます。そこに、高望みする母、無理解な父、友人との比較が出てきます。

 「自分は本当に今までの自分なのか?」という疑問と不安解消の為に、同一視の対象を求めます。仲間共通の「服装」、「合い言葉」、強いリーダーに依存し、「スピード、スリル」を味わう。また芸能人に偶像を求め、自分もアイドルになった気になる。他には、親の価値観に沿う、期待された自分だけを演じるようになります。これは自分の空洞化に繋がります。

 この不安解消の「あがき」がおさまり、良い友人ができて内面的な同一性が出来上がり、「これが自分だ」というものが獲得できれば、次の成長に進みます。

 自我同一性の確立に失敗すると「役割の混乱」として、自分が自分でなくなる、自分は何者なのかという「自我拡散」に陥る。

 その結果として、非行に走る傾向もあります。これは、「自己の定義を下そうとする試み」であって、他に適当なものになれないためにおこります。また自尊心や明るさを失い、人間の機械化が進みます。

 これが進行すると、「自分と世間との間に壁ができる」「自分は天の子」だとか「不思議な力を持っている」といった統合失調症の世界に入ります。※10

【成人期:23歳】

 23から35歳で、危機的主題は「親密性」をもつこと。家族や同僚とのむすびつき。※9

 「親密さ」と「孤独感」の対立主題も。

 人と社会と深く関わる時期。アインディティがないと相手がもっているアインディティに頼ることになる。自分が幸せになるための手段に人を使わない。依存しない。

 「親密さ」は、他人との親密な交わりを通じて自我同一性を築き上げていきます。

 その第一は、同性との親密な交流…お互い、相手に自分を見つけ、相手を写しながら(お互いに尊重し合い)、お互いに成長していきます。

 また異性との交流は良い友人から恋愛に変ることもあります。そして、親密さは、異性との1対1の交流に進みます。

 人に与える喜びを知り始めるのが特徴。

 一方、自我同一性が確立していないと、選択・決定・決断ができず、自分が相手の人格の中に吸収されてしまわないか?という不安に陥る。一般的に過保護で育ち、独立心、主体性のない人間に多い。

 例としては、

・「浅いふれあい」…熱烈な愛情を示しておきながら、いざとなると煮え切らない男女。自分が確立できていないため浅いふれあいしか持てない。

・結婚しそうに見えて、なかなか結婚しない。

・恋愛しても相手を次々に変えていく。

・自信のなさから「自己顕示欲」「理想の高い人」になり、自分の「身分証明書」を持たないためにノラリクラリとして心からの人とのコミュニケーションが取れない。

・人との関わりはファッションの一部であり、自分を良く見せる為の装飾品でしかないと思う。※10

【壮年期(36歳)】

 36から55歳で、危機的な主題としては、「世代性」を生きること。引継ぎと引き渡し。※9

 親となる時期であり、「生殖性」と「沈滞感」が対立概念。

 自分を通じて、周囲を、次世代を豊かにする時期。与えてもらう時代は終わった。大人は与える時代。

 「生殖性」としては、次の世代の為へとエネルギーの方向が向かうこと。親や上司は人を育てることにエネルギーを注ぐ。そして個人から集団へ。社会や環境をよりよくするために力が注がれる。与えることの至福を知る。

 「沈滞感」としては、周囲との関係を保てないと、子供が憎しみの対象となることも。また、仲間に対してはライバルとしか捉えない。自閉的な人生の暗部(犯罪など)に引き込まれるなど、社会的協調性を失い、自分だけの人生にとどまってしまう。

当然、人生は暗いもので、周囲との関係も保てなくなります。

自分しか愛せない人は子供は、憎しみの対象になり、愛を与えられなかった子供が大人になると、愛は搾取されるに等しいと考え、社会的協調性を失い、非行、自閉その他の社会常識では、考えられない行動をとります。※10

【老年期:56歳】

 56歳から。危機的な主題は「人生の統合」。人生に感謝ができるか。※9

テーマ:人生の統合(完成)

 「この時期に自分の人生を振り返り、満足できると、とても健康に幸福に、危機感を感じない人生を終えていくことができる。」

 (宇宙にとって)一瞬の命、一点のような存在と言っても、そこに大きな秩序のなかの自分を感じる。

 死んでも死にきれないという人は、まだ感謝ができません。まだ死んじゃいけないんです。エリクソンは、健康に幸福に生きてきた人のこころは、そういう満足と感謝の境地にいたると言っています。

 エリクソンの言うライフサイクルを、その順序のとおりに生きて、成熟した老年期をむかえたときに、本当の意味で、自分の人生に、そしてまわりの人々に、感謝できるのだと思います。※9

 

中年から老年期ともされ、「自我の統合」と「絶望」が対立概念。

 「自我の統合」としては、「~のおかげで」と、すべてを受け入れ感謝できる自分がいたとき(「悔いのない人生を送ってきた」と感じた時)。自分にとって不都合な経験や人間交流も含めたすべてのことに対して、新たな認識、理解を持つことで、感謝できる。両親、配偶者、子孫、友人に別の意味での感謝と人間交流ができる。次の時代へのサポーターになる。

 「絶望」としては、「~のせいで」と人にせいにしているとき。反省や後悔の多い人は、肯定して受け入れられないため、絶望に陥りやすい。蒸発あるいは老人期の自殺といったケースなども見られます。※10

平均寿命 男:83歳 女:89歳

【参考文献】

※1…『共働き夫婦最強の教科書』内藤真弓2021.10.6東洋経済新報社

※2…『LIFE SHIFT』リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット(訳)池村千秋、東洋経済、2016.11.3

※3…『20代、結婚までに知っておくべきお金の使い方』野瀬大樹、裕子、クロスメディア・パブリッシング、2011.6.11

※4…『「結婚」で人生を黒字化する』野瀬大樹、裕子、祥伝社、2010.11.5

※5…https://sitter.honeyclover.co.jp 『実家に頼れない共働き夫婦の子育て法』2021.12.8

※6…『結婚したら、やっておくべきお金のこと』中村芳子、ダイアモンド社、2009.5.28

※7…『戦略子育て』三谷宏治2018.7.12東洋経済新報社

※8…『パパは脳研究者』池谷裕二2017.8.18クレヨンハウス

※9…『あなたは人生に感謝ができますか?』佐々木正美、講談社、2012.10.29

※10…日本メンタルヘルス協会テキストより

※11…『人生の基盤は妊娠中から3歳までに決まる』白川嘉継、2013.8.15、東洋経済新報社

※12…『おっぱい先生の母乳育児「超」入門』平田喜代、2010.1.5東洋経済新報社

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