自由の女神の内部構造を作った「ギュスターヴ・エッフェル」は、1889年のパリ万博に向けて「エッフェル塔」を作る案を出し、フランス革命100周年ともなる万博のコンペで選ばれました。当時、世界で一番高い塔は石造りで作られたワシントン記念塔だったのですが、それをはるかに上回りました。これは鉄鋼の工業化と建築の可能性を示す記念塔となりました。
■①自由の女神の設計者■
自由の女神はフレデリック・バルトルディがデザインをしたものだが、この巨大な像をどうやって支えるか技術的な問題がありました。最初にバルトルディはユージン・バイオレット(Eugene Viollet-le Duc.)に頼んだものの、彼の提案する砂による大きな重い塊による基礎作りによる設計は上手く行きそうもない予感がする上に、彼自身も亡くなってしまいました。 そこで、バルトルディはエッフェルに支援を頼みました。 エッフェルは1878年のパリ万博の展示や、フランス最古の百貨店「ボン・マルシェ」、ガラビの鉄道用高架、パナマ運河などを手がけていました。特に、鋼の端を作ってかつてない規模の橋を作ったことなどが評価されたようです。
■②鉄鋼の可能性■
鉄は19世紀の特徴とも言うべき進歩思想と関連する材料で持久力もあり、弾力性もあるため、石のような伝統的材料とは逆に、圧迫応力や引っ張り応力に耐えることができるほか軽いので、基礎工事のコストも少なくて済み、経費削減につながる上、耐久性もあり、部品の組み立てが比較的簡単で、保管も便利な上、構造上の計算も正確にできるという可能性がありました。 エッフェルは基本的に「錬鉄」という「鉄鋼」よりも炭素含有量(強さや硬さに影響)が少ない素材で作っているのですが、まもなくより強固な「鉄鋼」が大量生産が一般化してきて、「鉄鋼」の時代が到来します。
■③自由の女神の骨組み■
自由の女神の内部は、人間の骨のように鉄で骨組みが作られました。四つの中心となる柱を建てて、それにクロスするような形で鉄骨を組んでいきます(トラス構造)。この塔の工法は、数年後に最初の超高層ビルの建築に用いられるものにもなっていくようです。頭部においては小さなフレームの鉄骨を組み、さらには螺旋階段を内部に通しています。1884年に骨組みを完成しています。
■④エッフェル塔の評価■
1889年のパリ万博はフランス革命100周年ともなる万博で、目玉となる大建造物を選定するためのコンペが行われ、エッフェル塔は「金属産業の独創的傑作として出現しなければならない。この目的に充分適うのはエッフェル塔のみ」という評価を受けて選ばれました。 またこのパリ万博には「機械館」という一番奥にある巨大な建物もあるのですが、こちらも鉄によってアーチ形に組まれ、さらにはクロスするように鉄骨を通したり、支点が移動することによって強固にする設計などが取り入れられています。 ただ、エッフェル塔はある意味では今までの伝統的な高い塔と違い、鉄骨のみという簡素なものであったため、芸術家などには酷評も受けたようです(一番高い塔ということは都市のイメージを作るため、果たしてパリのイメージにあっているかという点など)。 しかし、エッフェルは風圧に対する抵抗によって頂点に向かって細くなっていく構造美や、天文・気象・物理の観測・研究に寄与する上、戦時には監視塔として役立つとして反論しています。 実際1910年代にはエッフェルは観光客が減ってきたため取り壊しが検討されたようですが、第一次世界大戦の中の通信に関する重要拠点として選ばれ、免れています。
■⑤万博とエジソン■
この万博にはアメリカンのエジソンが招かれています。 このパリ万博においては、エッフェル塔がサーチライトでライトアップされ、会場はエジソンの発明である白熱電灯で照らし出され、万博史上初の夜間会場が実現するなどエジソンの技術はパリ万博のコンセプトに合っていたのだと思います。 エッフェルはエジソンを最上階の私室に招き、エジソンは彼の発明した蓄音機をエッフェルへと贈るというシーンがこの万博のハイライトのひとつだったと言われています。 ただこのときエジソンにとって重要だったのは、キネトスコープという動画最盛期の新しい改良のアイディアを得た事ではないでしょうか。 パリの生理学者で写真銃(銃のような形状で連続写真が撮れる。動作研究に連続写真をとるために開発)を開発したエティエンヌ=シェール・マレーからchronophotographyの存在を知ったようです。 これによりキネトスコープの第四回目のシリンダー式からストリップ式に移行する特許に影響されたとエジソン自身が証言しているようです。 その5年後にはキネトスコープの一般興行が始まります。
※https://www.ndl.go.jp/exposition/index.html『what is the statue of Liberty?』Joan Holub、https://ja.wikipedia.org/…/%E3%82%AE%E3%83%A5%E3%82%B9…https://ja.wikipedia.org/…/%E3%82%A8%E3%83%83%E3%83%95…https://ja.wikipedia.org/…/%E3%83%91%E3%83%AA%E4%B8%87…も参照