【エミール・クレペリン 1856~1926】
「クレペリン検査」というのを知っていますが?
以前は就職試験などに使われていたのですが、単純な線を引く作業を繰り返すことによって、その人の作業の傾向を分析し、その作業から心理傾向などを分析するテストです。
このかつて有名な「クレペリン検査」の元を作ったのが、エミール・クレペリンです。
そんなクレペリンですが、実は彼は心理学・精神医学にとって重要な転換期となる流れと重なっています。
その流れとは、
①心理学が科学的データに基づいて研究するようになった「実験心理学」と、
②現在の精神病などの診断基準を示した「DSM」の基礎となった精神病の分類、
③そして単純作業をする事で、心理テストを行うのデータを集める
・・・3点が大きなものとして挙げられます。
クレペリンは1856年生まれと、フロイトやブロイラーと同じ世代になります。
フロイトは後の精神医学の治療方法である「精神分析」を確立した人ですが、精神病の治療が登場するということは「①精神病というものがある程度定義できている」「②治療するためのベースとなる実験が行われている」の2点があってこそ存在することだと思います。
そして、その2点の流れとクレペリンは大きく関わっています。
クレペリンは北ドイツ出身の方ですが、ビュルツブルクで1878年は博士号をとるなど、脳生物学の研究をしていました。
しかし、クレペリンは視力が低かったことをもあり脳自体を顕微鏡などで研究することよりも、脳が引き起こす行為について興味を持ち始めていました。
1879年、心理学にとっては重要な転換期なのですが、ヴェルヘルム・ヴントが心理学の初の実験室を設けます。ヴントはヘルムホルツという「光の3原色」を発見したことで有名な物理学者の助手をしていました。この物理学などのような実験の方法論を、心理と言う当時は内省(自分に問いかける)的な哲学に近いようなアプローチの心理学に盛り込むために、実験室を設けました。
その実験室にクレペリンは参加したいと熱望します。
こうして1882年ヴントと共に心理学の実験を用いた研究を行います。
その後、精神病について様々な研究成果が報告されていたのをまとめ、精神病を「早発性痴呆(痴呆とはこの場合認知症の事でなく、感情に不調があること)」と「躁うつ病」に分類できるとしています。前者は後の「統合失調症」に繋がっていきます。
更に、有名な「クレペリン検査」の元となる「作業曲線」を発見します。「作業曲線」とは単純作業の結果が個人差がその人の精神的・心理的特徴と関係に反映することを示した曲線です。
この流れによってフロイトが登場する準備も整うのです。

ですので、クレペリンは意外と重要な心理学と精神医学の人物となっています。

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