今回は上野~千駄木にある「森鴎外が住んだことのある場所」を案内するとともに、夏目漱石も絡めて、1889年~1906年付近の明治後期の時代を読んで行こうと思います。

そして、それを更に感じるのにオススメな『坊っちゃんの時代』(関川夏央·谷口ジロー)という漫画の紹介と、それを経ることによって、楽しめる森鴎外記念館も紹介していきたいと思います。

o0960064813981724514

❶1889年 台東区池之端3丁目3番21号

ドイツに留学し、『舞姫』の作品の元となった体験をした後、結婚して実家から移り住んだのが、❶になります。

上野駅を降り、上野動物園の方に10分くらい歩いていくと、「水月ホテル 鴎外荘」というホテルがあります。
ここには1889年に鴎外が住んでいた家がありました。

森鴎外は1862年に生まれ、もともとは島根県の医者の家系に育ち、医者を志し家族ともども上京し、千住にある実家から帝国大学に通い、卒業後に陸軍に軍医としては入り、1884年ごろドイツに留学しました。
1888年に帰国し、その後結婚して実家から出て移り住んだのが、こちらになります。

この頃の鴎外を知るのにオススメな作品に『坊っちゃんの時代第二部 秋の舞姫』(関川夏央·谷口ジロー)があります。

 

坊っちゃんの時代 : 2 秋の舞姫 (アクションコミックス)

この頃は、自由民権運動が1885年の大阪事件を気に一気に冷め(運動自体は有名な板垣退助の「板垣死すとも、自由は死せず」の殺傷事件後の板垣の海外への外遊以来から冷めては来ていたらしい)、その後鹿鳴館時代が終わり、西洋と渡りあうため、どのようにしていこうか模索中(普請中)の時代でした。

この作品では、ドイツ時代に助けた『舞姫』のモデルともなったエリスが、森鴎外と結婚するために日本まで追いかけたという設定にして、この時代を描き出しています。
森鴎外の義を重んじる誠実さと、日本が西洋と渡り合うために抱えている矛盾を、上手く描き出しています。

因みにこの後に、大日本帝国憲法が発布され、西洋との不平等条約の撤廃のために、外国人裁判官登用などを目論んだ大隈重信外相暗殺未遂事件が起こるなど、まだまだ西洋との立ち位置を巡って、日本は模索に模索を重ねていきます。

さて、この頃は夏目漱石は何をしていたのでしょうか?

夏目漱石は1868年明治の始まりとともに生まれ、森鴎外とは6歳年が離れています。
夏目漱石は森鴎外がドイツに留学した頃に東大予備門の予科(同級生に秋山真之や南方熊楠、中村是公などがいた)に進学し、1889年には本科に進学していて正岡子規と親交を深め始めています。

❷1905年 東京市本郷区千駄木57番地

次にご案内するのは、漱石が『吾輩は猫である』を生み出した家があった場所になります。
実はこの家、以前に、森鴎外が住んでいたのです!!

水月ホテルから千駄木駅方面に歩くこと15分くらい、東京歯科大学の近くに史跡があります。

こちらは、森鴎外が❶の家を離婚を機に引っ越し、1890年から住み始めたのが、この❷の場所になります。
森鴎外自身は1892年には引っ越してしまっているため、住んでいた期間は短いです。

しかし、1905年から夏目漱石が住んだことになり、有名になりました。
この頃の夏目漱石と時代の空気を掴むのに『坊っちゃんの時代』がやはりオススメです。

 

坊っちゃんの時代 : 1 (アクションコミックス

 この作品では、名作『坊っちゃん』には特定の一人のモデルがいたと設定して、『坊っちゃん』の作成過程を通して、この時代を描き出しています。

日露戦争が終わり日本は西洋に対抗できる地位を築きつつも賠償金が思った以上にもらえず不況が起こる日本。日露戦争中にはロシアで広まりつつある社会主義が日本にも忍び、警戒する山県有朋。人気お雇い外国人ラフガディオ・ハーンを解雇して代わりに帝国大学に雇われるも悩む漱石。平塚らいてうという新時代の女性が、旧時代の森田草平(樋口一葉がかつて住んでいた場所に偶然住んでいた)を捨てて、新しい時代のエリート警視・伊集院。などなど、新しい時代と古い時代の相克を上手く描いています。

❸文京区森鴎外記念館 東京都文京区千駄木1-23-4

o0960054013981724538

最後に、森鴎外とその時代に興味を持って頂けたなら、千駄木駅から徒歩5分のこの場所!!

2012年にオープンしたばかりの記念館です。
そのため、建物自体も現代建築として見ごたえがあり、企画もデザイナーによってデザインされているため、とても新しさを感じます(ロゴも鴎外のアルファベットを漢字風に並べていたり、企画もポスター・パンフレットなども興味をひくようにデザインされてます。また企画展も森鴎外の気になる語り口で行っています。)。
森鴎外の生涯を、そして生きた時代を感じて、アートにも浸りたいならここがオススメです。

また、ここは以前の❷を引っ越した後に、こちらの❸に森鴎外が生涯住み続けた場所になります。
1892~1922年はどのように森鴎外は生きたのでしょうか?
また、夏目漱石を初めとする日本はどのような時代を迎えたのでしょうか?

是非とも、記念館で堪能して下さい!!

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です