目次
1章【離乳食】
 【アレルギー】【卵】【補完食】【NGリスト】
2章【果汁】
 【便秘】
3章【赤ちゃんと水】
 【水の役割】【飲ませ方】【純粋(ピュアウォーター)】【白湯(さゆ)】

1章【離乳食】

[時期]

 5カ月頃になるとスタートできます。

 目安としては

  • 首のすわりがしっかりしているか
  • 椅子などで支えることで座位が維持できるか
  • 食べ物に興味を示しているか
  • スプーンなどを口の中に入れても押し出してこないかどうか(哺乳反射の減弱)※10

 「授乳・離乳食の支援ガイド」(厚生労働省)5~6ヵ月から

 WHOガイドライン 早くて4か月、できれば6か月から。

 WHOはアレルギーを考慮したものでなく、赤ちゃんの栄養摂取やママの健康を考えてのことです。※16

[ステップ]

 離乳食はまず重湯から始めます。そして次第に「飲み込む」→「舌と上あごでつぶす」→「歯ぐきでつぶす」→「歯ぐきでかみつぶす」と発展させていきます。

 離乳食が3日しっかり食べられるようになり、完了食になったら少しずつ離乳しできるようにしていきましょう。

※10

[例]

 5ヵ月頃から離乳食を始めて、緑黄色野菜やヨーグルト、固ゆで卵の卵黄、市販のレバーペーストや魚肉などを少量ずつ試していきました。※16

【アレルギー】

 以前はアレルギー源になりやすい食品を早い時期から食べると、アレルギーを発症しやすくなると考えられていました。育児書やネット上には、卵や動物性タンパク質はなるべく遅く始めたほうがいいと書いてあるものもたくさんあります。昭和60年(1985)には47%もの人が5ヵ月未満に離乳食を開始していましたが、平成17年(2005)には15,5%まで減っています。

 たしかに、食物アレルギーを持つ子が抗原となる食品を摂取すると、症状が起こります。だからこそ、アレルギーを起こさないためには、アレルギーを起こしやすい食品を食べなければいいと考えられていました。しかし実は、アレルギー反応が起こってしまうのは、湿疹などができてバリアが破壊された皮膚から抗原が入ってくることが原因であり、逆に腸から抗原が吸収されるとアレルギーを抑える方向に働く、ということがわかってきたのです。

 現在では、食物アレルギーを発症しておらず湿疹の無い子には、アレルゲンを早めに(遅らせずに)少量ずつ食べさせたほうが、その後のアレルギーの発症を抑えられる可能性が高いと考えらえています。※16

【卵】

 支援ガイドでは、卵黄は生後5~6か月から開始すると書かれていて、すでに乳児湿疹などで皮膚バリアが壊れている場合は、まずしっかりと治療を行って、皮膚の状態を改善する事が大切です。日本では卵アレルギーが多いので、卵を食べ始める際は、平日午前中に、固ゆで卵の卵黄をごく少量から開始するのがおすすめです。

 卵は卵黄から始めるのは、抗原となるタンパク質が、主に卵白に入っているからです。また、生卵より加熱した卵、特に固ゆで卵の卵白と進めていき、卵焼きはそれより後にチャレンジするのがいいでしょう。

 卵をゆでた後に放置する事で、卵白から卵黄に抗原が浸透していくこともわかっています。特に卵黄の与え始めの時期は、ゆでた卵がある程度冷えたら、早めに卵白と分けておくのが安心です。

 日本では、ピーナッツアレルギーは少ないですが、ピーナッツペーストも少量ずつ食べさせてもいいかもしれません。粒が残っていないなめらかなタイプで、甘すぎないものがいいでしょう。

【補完食】

WHOの考え方として、離乳食は母乳よりカロリーが低いこともよくあります。カロリーの低い離乳食でお腹いっぱいになってしまうと、良質な栄養源である母乳を飲む量が減って十分な栄養を摂取できなくなってしまう可能性があるのです。また早い時期に離乳食を始めて授乳が減ってしまうと、新たな妊娠を抑制してくれるプロラクチンというホルモンの分泌も減少し妊娠の可能性が高まる。

 日本のような先進国ではアレルギーの方が大きな問題であると考えると、離乳食開始は5ヵ月が適切とも考えられる。

・日本の離乳食は米のおかゆから始めて一回食、二回食と進めていくもの。

・WHOの離乳食は、ガイドラインでは、離乳食でなく補完食と表現。

 補完食と表現したのは、WHOが二歳ごろまで母乳育児を続けるのを推奨していることと関係しています。

 赤ちゃんに与える食事は、母乳を卒業するためではなく、赤ちゃんの成長にともなって母乳だけでは足りなくなってきた栄養を補うため、という考え方なのです。

Point➀エネルギーと栄養素が豊富で、②衛生的かつ安全で、③家庭の食事から簡単に準備ができ、④地域で入手可能かつ購入可能なもの。

 始める時期は早ければ4か月、できれば6か月からで、主食と組み合わせて、豆類・動物性食品・緑黄野菜と果物・油脂(バターや植物油も、小スプーン一杯程度加えることで、エネルギーを得られる)や砂糖を食べさせる、と書かれています。

 白身魚が先で青魚や肉は後、といったような順序も特に指定されていません。

 特に強調されているのは、鉄分をしっかりと補うことです。赤ちゃんはママのお腹の中で鉄分を体に蓄えてから生まれてきますが、生後6か月までにその蓄えを使い切ってしまいます。

 母乳中の鉄分は実はとても少ないため、生後6か月を過ぎたら、離乳食を通じて鉄分を摂取する必要があるのです。鉄を多く含む食品の例としてレバーや赤身肉が挙げられています。大豆などの植物性食品にも鉄分は含まれていますが、動物性食品より吸収が悪いです。植物性食品は、鉄の吸収を促すために、果物などビタミンCを多く含む食品を一緒に食べることが勧められています。

 離乳食でよく使う食材では、ほうれん草や大豆製品、青のりなどに鉄分が比較的多く含まれています。一緒に果物など摂るとさらにいいでしょう。レバーは手軽に鉄分を摂取できる食品ですが、毎日食べるとビタミンAが多すぎるので少量を週1~2回程度食べれば十分です。日本の離乳食の常識とは違いますが、離乳食の早い段階から赤身肉を食べさせるのもいいのでは。

 薄いおかゆやスープを与えることについては、問題があると指摘されています。薄いおかゆや具の少ないスープは、栄養素やカロリーが少なく、赤ちゃんがお腹いっぱい食べても、必要な栄養を満たすことができません。おかゆを与えるなら、スプーンを傾けても落ちないくらいの濃いものにし、食べにくい場合は水分ではなく油分を追加して柔らかくするように、そしてスープも、固形成分だけ取り出して濃いピューレにしたものを与えるようにとアドバイスされています。日本では、離乳食は10倍がゆを小さじ一杯から、と言われることもありますが、それとは真逆の指針です。

 回数については、1日2回、小スプーン1~2杯から始め、6~7ヶ月で1日3回、1歳までに少なくとも1日5回(3回の食事と2回の間食)に増やしていくようかかれています。

 おかゆ、野菜、豆腐、白身魚という順番や、一回食から始めて回数を増やすというやり方は、日本独特のものです。※16

【NGリスト】

 ネットにさまざまな「月齢別離乳食材NGリスト」がありますが、本当に気を付けなければいけないものは、それほど多くはありません。

 ボツリヌ症のリスクがあるはちみつや黒糖は一歳未満の子に与えない、食中毒になりやすい生ものやつまらせやすい食材(餅・粒のままのピーナッツ・こんにゃくゼリーなど)は避ける、といったことくらいでしょう。※16

2章【果汁】

・果汁をいつから飲ませるか(1ヵ月~2ヵ月)

 母乳栄養や粉乳にビタミンCがあるため、粉乳ではビタミンCが熱で多少こわれるにしても、以前のように壊血病をおこすようなことはない。

 それでもあげるのは、いまのところ味覚が主なため、おいしいものを与えて、人生の楽しさをわからせてやりたい。便も楽に出る。

 ビタミンCが目的でないためビタミンCの量は大切でない。その季節に最盛期をむかえているものが、もっともおいしく、安く、新鮮である。ジューサーやレモンしぼり器を使う。果皮は農薬がかかっているから、とる。しぼった果汁は、金属製の茶こし(熱湯をよくかけておいて:道具はすべて熱湯をかけ消毒)でこして、びんにいれる。

 こすのにガーゼをつかう場合は、石鹸で洗って太陽光線でわかし、四つ折りにしてアルミの弁当箱に一枚ずつ重ねて入れ、蒸し器でむさねばならぬ。

 1ヵ月すんだころの赤ちゃんでは、湯さましで倍ぐらいにうすめる。のまない場合は、砂糖を20~30ml入れる。

 便秘解消の目的でやったのに、うすめたのでは無効のときは、うすめずにやる。1回のこの月齢の最量は、50mlどまり。回数は2回まで。

 ミルクびんのゴム乳くびにならす効用もある。※17

 以前は、果汁はビタミンを補給でき、体にいいものだという考え方がありました。2007年度までは、母子手帳の保護者の記録の生後3~4か月の欄にも「薄めた果汁やスープを飲ませていますか」という記述がありましたし、古い育児書の中には、お風呂上りに果汁を飲ませるのを勧めているものもあります。

 果汁だけ取り出したジュースは、繊維質が取り除かれてしまっています。ジュースは、果物そのものよりずっと急激に糖分が吸収されてしまうので、健康にはよくないことがわかってきたのです。アメリカ小児科学会は現在、1歳までの乳児にジュースを与えることを勧めないと明言しています。

 ジュースは虫歯の原因になるほか、栄養過多や、逆に栄養不足を引き起こす場合もあることが、研究からもわかっています。

Gibson SA『Non-milk extrinsic Sugars in the diets of pre-school children』1997イギリスによると、1歳半~4歳半で、お菓子やジュースの摂取量が多い子は、牛乳や肉、パン、野菜の摂取量が少なくなっており、それが原因で鉄・亜鉛府毒になっていたと考えられます。

 鉄分不足は貧血を起こし、神経系の発達にも影響します。亜鉛も免疫システムや傷の治りに関係する重要な栄養ですが、いずれも乳幼児で不足しやすいのです。

Smith MM Lifshitz F.『Excess fruit juice consumption as a contributing factor in honorganic failure to thrive』アメリカによると、フルーツジュースの飲み過ぎで成長障害を起こした1~2歳の成長障害原因は、タンパク質や脂肪、その他の栄養素の摂取不足になっていたことでした。

 アメリカ小児学会の提言によると、生後6か月頃になって果物を食べさせたいときは、ジュースでなく果物を潰して、繊維質を含んだ果肉ごと与えるようにとされています。1歳を過ぎて果物100%のフルーツジュースを与えたい場合も、特別な日だけにとどめ、1日120ml以下にするとよいでしょう。

 乳児期に砂糖の入った飲み物を飲ませると、6歳の時点での肥満が増えたという研究や、虫歯が増えたという研究もあります。

 糖分が吸収しきれないと、大腸でガスを発生させたり、下痢を引き起こしたりすることがあります。この原理を逆手に取って、フルーツジュースを便秘の治療に使う場合もあるようです。

 脱水には適度な糖分とナトリウムが含まれている経口補水液が有効。ただし、あまりおいしくないため、軽度であればフルーツジュースを粉に薄めるのも。水分をたくさん摂らせたいのに飲んでくれないときに糖分を含ませるのも方法。※16

【便秘】

 母乳育ちの赤ちゃんは生後1か月を過ぎると2~3日に1回ということは少なくありません。これは粉ミルクよりも“ごみ”としてウンチにだすものが少ないからと考えるとよいでしょう。ですので、体重がしっかりと増えて、お腹の張りや嘔吐がなければ心配ありません。

  母乳やミルクを飲んでいるときは、あまり便秘になりにくいのが一般的ですが、離乳食をスタートすると摂取する水分が減るため、便秘になりやすい赤ちゃんが増えてくるのです。※6

 離乳食も、はじめは10倍粥など水分がメインです。食材は食物繊維として、便を柔らかくするバナナ・りんご・いちご・みかんなどを、また便のかさをふやす青物野菜(かぼちゃ・ブロッコリー・キャベツ)などをバランスよくあたえるとよいでしょう。※7

3章【赤ちゃんと水】

 赤ちゃんが水道水をそのまま飲めるようになるのは、生後1年を超えたあたりといわれています。※4

 赤ちゃんは、体の80%近くが水分で、新陳代謝がさかんです。妊婦さん以上に水分を欲しています。

 しかし、生後6ヵ月までの赤ちゃんには、水でお腹いっぱになると、ミルクが飲めず、栄養が不足する場合があり、母乳またはミルクのみをあげてください(発熱や下痢など病気の際の水分補給なら生後2・3ヵ月でも構わない情報もあり※6)。

 6ヵ月を過ぎた赤ちゃんには軟水が適してます。硬水は負担がおおきすぎるためですが、こちらも超軟水やピュアウォーターにこだわる必要はないと考えています。

 水道水を浄水器でろ過し、塩素などの異物を取り除けば十分。30mg/L前後の軟水は、赤ちゃんもよろこんで飲んでくれるはずです。適度なミネラルで、腸を活発化する。身体の免疫力は、腸のはたらきによって、大きく向上したり衰えたりすると、考えられています。特に、人は生後1年ほどで腸内環境を整えますから、赤ちゃんの時期に飲む水も、その後の健康に関連する可能性があります。お腹を壊してしまったときなどは、負担の少ないピュアウォーターも良い。しかし、不純物を排除することだけに、躍起になるのは考えものです。※4

【水の役割】

➀水分補給に用いられる。

②離乳食への移行…白湯を与えることで母乳やミルク以外の味に慣れるため、離乳食に移行するのがスムーズになると言われています。母乳やミルクの味ばかりになれていると、初めての離乳食を食べたときに嫌がったり、吐きだしたりすることもあるため、白湯の味に慣れておくことが大切だと考えられているのです。また離乳食は、ほとんどが水で調理するため、白湯で水の味に慣れておくことで、抵抗なく食べ始めることができる。

③混合育児の準備…母乳を与えていた場合、急に哺乳瓶に切り替わると抵抗を感じることが多いため、まずは白湯の味に慣れて、哺乳瓶に白湯を入れて飲ませることで、ミルクの導入をスムーズにしていきます。

④便秘解消に…母乳やミルクを飲んでいるときは、あまり便秘になりにくいのが一般的ですが、離乳食をスタートすると摂取する水分が減るため、便秘になりやすい赤ちゃんが増えてくるのです。※6

【飲ませ方】

 お風呂上りや外出から帰宅したとき、また水分が不足していると感じたときなど。

 初めて飲ます場合は、スプーンで赤ちゃんの唇に白湯を少しつけて湿らせ、反応を見てみる。嫌がらないようなら、少しだけ口の中に入れてみます。

 一度にたくさんの白湯を与えてしまうと、気管に入ってむせてしまうこともあるので、少量ずつ試すようにしてください。※6

【純粋(ピュアウォーター)】

スーパーでくんできた純水を生のまま飲むと、体が保持している大事なミネラルを溶け出せてしまう危険性があるのです(調理などなら少量ずつなら可能)。ミネラル不足は、さまざまな病気を引き起こす原因となります。

 パッケージにピュアウォーターなどと書かれているのも純粋のことです。

 5年保存など、長期保存可能な非常水は、高温殺菌しているか、蒸留水、もしくは純水です。※5

【白湯(さゆ)】

 ミネラルウォーターや水道水ではなく、なぜ白湯を与える常識があったのかというと、口当たりがまったく違うというのが大きなポイント。一度沸騰させると口当たりが柔らかくなるので、敏感な赤ちゃんでも安心して飲める。もう一つ大きな特徴は体内への吸収率が高い事です。

水より温かく、お湯より冷たいことから赤ちゃんも飲みやすい温度ともされている。※6

 蒸留水は溶け込んでいる酸素がない状態のため、気軽に飲んで良い水ではありません。また沸騰させたさゆも、溶存酸素を失った「体を壊す水」です。

 昔は、赤ちゃんには湯冷ましを飲ませるというのが常識でした。少量ならば構いませんが、湯冷ましばかり飲ませるのも、赤ちゃんの健康によいことではありません。

 最近のお母さんは、ペットボトル入りの天然水まで沸かしてから赤ちゃんにあげていると聞きます。その水が非加熱の天然水だった場合、沸騰させれば、せっかくの溶存酸素や水の活性を失ってしまうことになります。

 「赤ちゃんに生水をあげてはいけない」というのは、お母さんたちの常識のようですが、それは腸にとっては非常識です。赤ちゃんも大人と同じく、少しくらいの殺菌が入ってきた方が腸を健康に鍛えられます。

 さゆのように暖かいものを飲めば、体は温まります。しかし溶存酸素は少なくなります。また水道水でさゆをつくるのは、残留汚染物質を濃縮して飲むようなものだと思ってください。※5

※4…https://resettimes.com/blog/topics/column_58/2022.12.07

※5…https://www.flair-water.jp/column/fujita-column/water-by-which-deionized-water-makes-itself-ill/ 藤田紘一郎

※6…https://akachanikuji.com/sayu

※7…https://www.chibasyouni.com/wordpress/wp-content/uploads/2020/03/millennium72_15.pdf

※10…『パパとママの育児戦略』NPO法人ファザーリング・ジャパン、2018.10.12 repicbook

※16…『科学的に正しい子育て』森田麻里子2020.1.30光文社

※17…『定本 育児の百科』松田道雄2007.12.14岩波書店