フランスのナチュラルミネラルウォーターについて論じ、さらにミネラルウォーターについての効能などを考察します。

■フランスのミネラルウォーター■

A・特徴

➀土地による特徴

 ヨーロッパのアルプスは水成岩(大昔、海の底にあったのが、せり上がってできたもの)でできた土であるため、カルシウム(アルカリ性)の含有量が多い。※2

 また平坦な大地が広がるため地中滞在時間が長く、地層のミネラルを含んだ硬水がおおくなります。※1

 そのため、肉がメインの西洋料理では不足しがちなミネラルと肉・チーズ・卵の酸性を中和します。

②法律

 ヨーロッパではナチュラルウォーターを煮沸・殺菌しない法律があるため、

 H2Oの五員環が残るため、生理活動を活性化させるともいいます。※3

B・フランスのミネラルウォーターの歴史

 昔から水による健康改善の話はありましたが、18世紀後半あたりから水を飲むことや風呂として利用する事の医療的効用に関心がもたれるようになりました。ルイ15世やフランスの貴族などが、コントレックスやエビアンなどを注目し始めます。

 19世紀に入ると、水の科学的分析が進んだ(医学アカデミーなど)事と合わせて、パリの水の汚染状況からコレラの発生が増大したこともあり、良質な水に対する関心が高まったようです(温熱療法などもはじまります。このときに人工的炭酸水に関する関心も高まり、1832年には人工的なコレラの解毒剤として注目を浴びています。良質なスペイサイドの水を使ったスコッチなどの評価も認められたためか、この時期辺りにスコッチもジョージ4世の時代(1823年)に密造酒から正式なお酒として認められています。

 1855年にはナポレオン三世の時代にパリの年の改造を任されたオスマンのもと、ウジューヌ・ベルクランがパリの上下水道を完成させて水質の改善を行っています。そしてこの辺りから良質な水が取れる場所でのスパ施設の建設への関心が高まっていくようです。

 そして19世紀後半にはフランス厚生省により正式な認定を行い、水の瓶詰などが始まっていくようです。

 1909年頃には、カジノやホテルなどを含むスパ施設の本格的形成の時代に進んでいったようです。

C・エビアンとコントレックス

 エビアンとコントレックス(またヴィッテルも)はフランス革命期前後に評価され、19世紀にスパ施設として認められて1909年頃にホテル・カジノなども含めた街を形成した水という点で体現していると思い紹介します。

【エビアン】

カルシウムとマグネシウムが多く含まれミネラルバランスの良い、エビアン(硬度304mg/ℓ(Ca8 Mg2.6 Na0.7)の硬水でph7.2の鉱泉水)。ウォーターローディングに適正な基準をもった水です。

このミネラルウォーターが取れる「エビアン=レ=バン」は、水源としてだけでなく、水源の発見から始まりスパ施設として発展していった町でだったようです。

■①ミネラルウォーターの発見と評価■

1789年、フランス革命の始まりの年に、フランスの貴族がエビアン=レ=バンの町で、天然の水源を発見し、素晴らしい水と評価し飲み始めた事が始まりのようです(※1)。

1807~8年位に、ナポレオンの第一帝政時代に、保養施設(spa town)として注目され始め、このミネラルウォーターの科学的分析が進められ、飲料水としてだけでなくお風呂の水としても評価され、1824年には「温熱療法(身体を温め血行を良くする物理療法)」(※1)としても使われ始めたようです。

■②エビアン=レ=バンという町■

さて、このエビアンのミネラル・ウォーターが取れるエビアン=レ=バンという町は、フランスとスイスの国境にある「レマン湖」の南側(フランス側)にある町です。

アルプス山脈に包まれていて、アルプスを越えるとイタリアがあります。

1809年にはパリとミラノを繋ぐ道路(RN5)が開通し、更にレイクサイドである場所の良さから保養施設として注目を浴び始めたようです。

そして、多くのホテルが建設されていき、ホリデー・リゾートとして人気が高まっていき、カジノなど娯楽施設も充実していきます。

特に、1909年に「世界一美しいホテル」を目指したロイヤル・ホテル(エビアン・ロイヤル・パレス)が建つことで、スパ地としての価値を上げ流行し、多くの著名人が招かれるようになったようです。

■③ロイヤル・ホテルと著名人■

ロイヤル・ホテルの「ロイヤル」とは、イギリスのヴィクトリア女王の息子であり、1901年からヴィクトリア女王の後を継いだ「エドワード7世」のことを意味するようです。エドワード7世を招くことが一つの目標であったようで、(エドワード7世は訪れることなく亡くなってしまいましたが)非常に洗練されたホテルのようです。

様式としては「アール・ヌーボー」と「アール・デコ」のスタイルを組みわせたようです。

1900年のパリ万博で命名された「アール・ヌーボー」と1920年あたりに絶頂を迎えていく「アール・デコ」の過渡期であったと考えられるかもしれません。

特にこのロイヤル・ホテルには1926年あたりに、後に世界で最も有名なレストランのひとつ「ラ・ピラミッド」を作り出す「フェルナン・ポワン(1897-1955)」と、後に世界最高峰の料理コンクールを作る「ポール・ボキューズ(1926-2018)」の父がコックとして働いていることも重要ではないでしょうか(このときポワンとボキューズの父が知り合った関係で、ボキューズはポワンのもとで働くことになりました)。

1926年と言うと欧米においては「騒乱の1920年代」と呼ばれる、技術革新が進み、文化や経済が活気づいた時期でもあったため、このときのロイヤル・ホテルとエビアン=レ=バンの一つのハイライトと言えるかもしれません。

また、ロイヤル・ホテルができる前の1902年あたりには、「映画の父」とも言われるリュミエール兄弟の住居もあったようです。1895年に、エジソンの「キネトスコープ」に触発され開発した「シネマトグラフ」をリヨンで制作し、1900年にパリ万博で世界最初の実写映画を公開したあたりということになると思います。

ポワンもリュミエールもリヨン周辺の拠点としており、フランスの第二位の規模とも言われる「リヨン」がローヌ河を通して、この「エビアン=レ=バン」があるレマン湖と繋がっていることが関係するのではないでしょうか。

【コントレックス】

硬度1468mg/ℓ(500mlで牛乳瓶200mlのカルシウムとアーモンド約9粒分のマグネシウム)でph7.4の弱アルカリ性で鉱水です。

■①ルイ15世の侍医の発見■

 ルイ15世は妃としてポーランド王スタニスワフ・レシチニスキの娘マリーと結婚しました。1737年にポーランド継承戦争の結果マリア・テレジアとロレーヌ公のフランツ1世が結婚したため、ロレーヌ公をポーランド王を追放されたスタニフワフに譲ることになり(フランツはミラノ公になる)ました。

 その際、スタニフワフの侍医であり、さらにルイ15世の侍医にもなったものがコントレックスの水の評価を広めます。

 この啓蒙主義の時代にはミネラルとウォーターの治療上の美徳について議論されることがあったようです。

 ただ1766年にスタニスワフが死去し、ロレーヌはフランスに帰属すると一旦コントレックスの評価は下がったようです。

■②発展■

 1845・1865年に道路の設備が整い、Lois Bouloumieが治療のためにコントレックスと近くのヴィッテルの水で療養したところ回復し再評価したため、1855年にはスパ施設が設立されたようです。

 その後、1900~1914年になりホテルやカジノも形成され1909年にはスパとしての大規模な施設が完成したようです。

 現在も水源を大切にし、条例で水質を守るための周りの環境保護を行っているようです。

■ミネラルウォーター論■

A・水の基本的な性質

【水の作用】

 水は、

 ➀溶解作用という食べ物を水を媒介にして体内で吸収しやすい栄養素にする作用を持っていて、さらに老廃物の排出も行います。

 ②温まりにくく、冷めにくいため体温を維持する機能があります。また発汗により、体表の温度を下げる作用も持っています。後、のどなどは粘膜で覆われているため適度な湿度がのどのパフォーマンスを保ちます。※1

 更に、硬度・ph・天然水・電解質などの成分によって効用が変わりますが、それは後の項で紹介します。

【水の過剰摂取や脱水症状の対処法】

 但し、摂りすぎる(1日飲んでもいい水の限界量は3リットルと言われています)と喉が渇きすぎた状態になって水分が吸収しにくくなったり、水分量が増加して腎臓の排出量を越してしまい「水中毒」を起こしたり、電解質が含まれていない水だと塩分を低くしてしまいナトリウム不足(弱酸性に近づく)状態になってしまいます。

 そのため、必要以上に脱水症状が進んでしまった場合は、塩分が不足している状態の為、水分・塩分・糖分の最適に配合された経口補水液を飲んだ方が吸収がよく、塩分の不足に対処でき、水のとりすぎの弊害を防ぐため有効と言われています。

【薬を服用するとき】

 水以外だと飲料水に含まれている成分が薬の適切な箇所での吸収に支障をきたしてしまうため、水でしかもぬるま湯(体温にちかい)ぐらいが一番適性のようです。

【水分を意識的にとる時】

 食欲がないときは食物から取れる水分量が減るため、水分を意識的にとる必要があります。

 また睡眠においても水分を消費するため、睡眠前と睡眠後の水分の補給も大切になります。※1

【水の味わい】

 常温15~17℃はまろやかな甘みを味わうのに適した温度ですが、水道水は特にこの温度がカルキ臭くなってしまう温度でもあります。

 5~12℃(10~15℃とも)が心地よいと感じる冷たさのようです。

 1~5℃の冷蔵庫のままだと少し冷たいようです。※1

 加熱処理すると酸素が抜けておいしくなるとも言われています。天然水には特に酸素や炭酸ガスが多く含まれているため変化が大きいようです。

 また硬度が高いほど苦みなど独特な風味になり、軟水の方がまろやかで口当たりが良いです。

【適切な摂取方法】

 スポーツなどで考えられる「ウォーター・ローディング」という方法があります。

 毎日1~1.5リットルの水を少しづつ(250mlくらい)時間をおいて摂取することで、身体を常に満たしておき、発汗によって水分を失っても、運動能力の低下を防ぐことができるという方法です。

 またカルシウム(血管の弾力化による新陳代謝の活発化が主)やナトリウムがあった方が運動パフォーマンスの維持に繋がり、硬度300くらいがちょうど良いようです。※1

B成分による違い

➀硬度

 ミネラル成分の含有量を示す指標。ミネラルは体内で生成することのできないものなので、体質改善に繋がります。

 硬度による分類は以下のようになります。

  • 硬度=(Ca×2.5)+(Mg×4)

 また硬度が高いほど苦みなど独特な風味になり、軟水の方がまろやかで口当たりが良いです。

 カルシウムは、骨や歯の形成の他、血液の凝固や筋肉の収縮、酸素を活性化させ、心臓が正常に動くなど、からだの正常な機能を助けます。

 またカルシウムパラドックスというのがあり、カルシウムが不足すると骨などのカルシウムを溶かし血液に溶かし、必要以上にカルシウムを血液に放出して、血液の壁に付着し動脈硬化を引き起こし心筋梗塞や脳梗塞にも繋がります。また、骨が減るので骨粗鬆症にも繋がります。

一方、カルシウムが含まれた中硬水(300mg/ℓくらい)は血管に弾力性をもたせ、血のめぐりを良くすると言われています(新陳代謝が活発化)。※2

 マグネシウムは、記憶におけるカルシウムをイオンの必要以上の作用を上手く妨げる効果を発揮し、アルツハイマー対策にもなるようです。但しとりすぎると下痢になったりすることもあるようです。※2

 日本は火山灰で急峻な山地で平野が広くないため、カルシウム(アルカリ性)が少ないため意識的にカルシウム(アルカリ性)を摂る必要があります。

 肉・卵・チーズなども酸性でミネラルが不足しがちなので、摂る必要があります。

 またカルシウムとマグネシウムは約2~3:1で摂取することが望ましいと言われています。※1

②ph

 Ph  0(酸性)←7(中性)→14(アルカリ性)

 健康な人の体液は、ph値が7.4の弱アルカリ性と言われています。

 日本は火山灰で急峻な山地で平野が広くないため、カルシウム(アルカリ性)が少ないため意識的にカルシウム(アルカリ性)を摂る必要があります。

 肉・卵・チーズなども酸性でミネラルが不足しがちなので、摂る必要があります。※2

 また疲れてくると身体は酸性に傾き、エネルギー分解が滞り、中性脂肪や糖の分解も鈍くなります。※1

 また水にカルシウム化合物を添加して電気分解した水を「アルカリイオン水」といいますが、アルカリイオン水は弱アルカリ性となります。弱アルカリ性の身体との相性がよく、特に人工的にイオン化されているため粒子が細かく、体内に吸収されやすくなっています。※1

 弱酸性の水はうがいや消毒に利用できます。また人の肌は弱酸性なので、弱酸性の水で顔を洗ったり、化粧水として使うとしっとりします。※1

➂抗酸化作用

 活性酸素は体内に侵入した殺菌をやっつける働きがありますが、過剰に発生するとからだの組織が酸化されてさびついた状態になってしまいます。

 抗酸化力のある水は

 ①磁鉄鉱や石灰層などの地層を通過してきた天然水。磁鉄鉱や石灰層に含まれる活性水素には抗酸化作用が含まれるようです。

 ②水に高度の水素を添加した水素水

 ③アルカリイオン水  の3点になります。※3

④炭酸水、生の水、シリカ

 【炭酸水】は天然のものであると重炭酸イオンが乳酸を中和し疲労回復に繋がります。更に血液中の二酸化炭素の濃度が上がり、酸欠と勘違いするため、血流量を増やします。また末梢血管を拡張し血行促進や血圧低下に繋がります。※3

 【生の水】

 ナチュラルウォーターで煮沸や消毒をしていないものはH2Oの五員環を残すため生理活動を活性化させます(雪解け水が六員環のため一番作用が強い)。煮沸や消毒は五員環を失います。※3

 【シリカ】

 ケイ素が自然界で形成されたもので体内でコラーゲンをつくるのに必要です。脱毛や老化も防ぎます。※3

 【サルフェート】

 カルシウムやミネラルと硫酸基または亜硫酸基とがけつごうしてできた硫酸塩のことです。サルフェートは有機化合物の排出を促進する作用、つまりデトックス効果があるとされています。※3

C飲料水のタイプ

 汚染された水などでなく、自然の作用や人工的に作用によって濾過された水が基本的に飲料水となります。

【ミネラルウォーター】

 ナチュラルウォーターとは特定の水源から採水された地下水を原水とし、ヨーロッパでは沈殿、ろ過、加熱殺菌以外の物理的、化学的な処理を行っていない水の事を差します。

 日本ではすべてのミネラルウォーターに殺菌が義務付けられています。

 ナチュラルウォーターでミネラルが含まれているものを、ナチュラルミネラルウォーターと言います。

農林水産省「ミネラルウォーターの品質表示ガイドライン」による分類

 ➀ミネラルを含むもの

  鉱水:ポンプなどで採水したミネラルを含む地下水

  鉱泉水:水温25℃未満でミネラルを含み自噴している地下水

  温泉水:水温25℃以上でミネラルを含み自噴している地下水

 ②ミネラルを規定としないもの

  伏流水:浅い地下水

  湧き水:自噴している地下水

  浅井戸:浅い井戸水

  深井戸:深い井戸水

【アルカリイオン水】

水にカルシウム化合物を添加して電気分解した水を「アルカリイオン水」といいますが、アルカリイオン水は弱アルカリ性となります。弱アルカリ性の身体との相性がよく、特に人工的にイオン化されているため粒子が細かく、体内に吸収されやすくなっています。※1

【水道水】

 地下水や川の水などを調合し、塩素を主とした消毒が行われています。

 また水道法によって50項目の水質基準があり、色・濁り・消毒の残留効果の3項目は毎回検査を行っており安全性が保たれています。

 さらに塩素が含まれているため、3日ほど保存が可能。

 また塩素には大腸菌などの病原菌を殺菌消毒する効果があります。ただ残留塩素濃度は法律で決まっていて最低限と義務付けられています。※4

 ただし常温だとカルキ臭い(塩素のにおい)ため、浄水器を使ったり、沸騰させたあと夜間の蓋を開けて5~10分ほど続ける事によって消すことができるようです。ただし、塩素の殺菌作用がなくなるため、保存はできなくなります。

【海洋深層水】

 水深200m以下にある深海水のこと、太陽光が届かず水温が低いため、海洋性細菌が少なく水質汚染がありません。人間の体内のミネラルバランスと似ており、ナトリウムやマグネシウムが含まれています。そのまま飲むと塩辛いので、ほとんどのメーカーは塩分を取り除き、殺菌などの処理をして加工しています。※1

※1…エビアンHP https://www.evian.co.jp/

※2…『アルカリ食健康法』川島四郎

※3…『若返りの科学』藤田紘一郎

※4…http://www.city.yachiyo.chiba.jp/content/000027170.pdf

おまけ 世界のミネラルウォーターギャラリー

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