【① お肉の変化の呼び名】

お肉を焼く際、お肉の焼き方を極めるなら!!

、、、まず「お肉の状態」を知る事です。

では、そもそも、お肉は焼くとどのように変化するのでしょうか?

■ミディアム、レア、ウェルダンetc…■

 お肉の加熱による変化を一番端的に、しかも親しみ深く接しているのが、おそらく「レア、ミディアム、ウェルダン…」などのステーキを注文する時の言葉ではないでしょうか?

それらの分類はお肉の色や焼けてる具合など様々な分類の仕方がありますが、それぞれを深く考察するためには、「内部温度」によって分類する事が、一番明確に分けられ、しかも今後深く考察していくことに役立っていくと思います。

生(ロウ):40℃くらい

レア:50℃くらい(45~65℃とも)

ミディアム:60℃くらい(65~70℃とも)

ウェルダン:70℃くらい(70~80℃とも)

ベリーウェルダン:90℃くらい(90~95℃とも)

【② 加熱のミラクル】

 お肉は加熱すると、どうなるのでしょうか?

 答えは色々ありますが、今回は「タンパク質・脂質・肉汁・コラーゲン」が「温度」よって変化するとして考えてみたいと思います。

■お肉の要素の温度帯別変化・上・40~50℃■

40℃・Raw】40℃は肉の変化の始まりの温度とも言えます。

 たんぱく質の熱変性により含まれていた水分が少しづつでてきて、すじなどについてる脂質が少しづつ溶け出し始めます。

 お肉がきつね色になりさまざまな香りを作り出す「メイラード反応」もこのときから始まるようです。

 もともと生肉の状態ですと実は香りはあまりなく、塩分やアミノ酸、酸味がメインのようです。しかし、焼いていくことで徐々に香気成分を化学反応で作り出していきます。

50℃・レア】タンパク質であるミオシンが変性し、これが白色をつく出す関係で、赤と混じりピンク色になっていきます。

 このときは水分は抜けるものの肉汁は定着しているため、たんぱく質がすこし凝固しつつも、ジューシーな味わいです。

【➂ 60℃の変化術】

 お肉は60℃になるにつれ、肉の出来具合を色で判断することができなくなります。

 それは肉汁が透明になり、肉の色もブラウングレーと変わり切ってしまうからです。

 また、60~65℃の間で大量の水分と肉汁を放出し始めます。

 40℃がミラクルの始まりであったら、60℃は「変化(へんげ)」の始まりと言えるかもしれません。

■お肉の要素の温度帯別変化・下・60~50℃■

【60℃・ミディアム】60℃になると今まで焼くことによって柔らかくなっていたのが、一気に軟化が75℃くらいまで止まります。

 これはたんぱく質が凝固して、さらに結合組織のコラーゲンも収縮して、内部にあった水分や肉汁が大量に放出され、お肉自体が乾燥されたものになってくるからです。

 65℃以下までは水分の放出や蒸発がメインですが、65℃以上になると肉汁の損失も激しくなります。

【70℃・ウェルダン】

 70℃辺りから、結合組織のコラーゲンは今まで収縮していたのが、ゼリー状に軟化し溶解し始めます。またたんぱく質も固く乾燥していますが結合組織がゼラチン化されていくため、もはや一つの結合体ではなくなり、柔らかく感じるようになります。

これは75℃くらいから顕著になり、60℃から停まっていた軟化が再び始まります。

また70℃は殺菌にとっても大切な温度です。

人間の病気を引き起こす可能性があるバクテリアも70℃以上の温度で破壊されていきます。

牛肉の場合は、基本的には肉の表面に細菌がいるため、表面だけ70℃以上で焼くだけでも十分殺菌になります。

【80℃・90℃ベリーウェルダン】

 80℃くらいになると肉汁などの放出が一通り終わります。糖類を100℃以上で熱するとカラメル化反応が起こったりしますが、「炭化」も進んできて焦げにも繋がっていきます。

【④ お肉を焼く火力の方程式】

ちらほら、「新常識」という名目で、「お肉を焼くのは弱火で時間をかけて」と紹介されることがあります。

強火で焼きたがるのは、やはりお肉はしっかり焼いた方がよいという気持ちや、時間をかけて焼くと焦げてしまうという気持ちがあるためでしょうか。

そのため、弱火で焼くのは色々勇気がいるため、新常識という形で受け入れられるということなのかな、と思ったりします。

しかし、僕が思うに月並みにな回答になってしまいますが、「お肉の種類や性質に合わせて焼く」が答えなような気が僕はします。

そのため、今回は弱火・強火、それぞれの特徴を考察していきたいと思います。

【強火】

 強火で焼くとお肉の中の温度と、外の温度の差が大きくなります。

 そのため、生に近い状態でも美味しいお肉であれば、レアやミディアムなどの焼き方に適しているような気がします。

 一般には、外側がしっかりやけると、内側の肉汁の放出が防げるとも言われています。

 また、強火である程、きつね色になるメイラード反応が起こりやすくなるため、焦げに気を付ければ香ばしさも出て来ると思います。

 そして、身体に影響を及ぼす細菌(バクテリア)は75℃以上で焼くことが必要であり、牛肉は表面に細菌が集中するため、強火で外側の殺菌も理に合っているような気がします。

 ただし、すぐに高温に外側がなってしまうため長時間調理する事が難しいため、中までしっかり焼かなくてはならない豚肉や、筋の多い牛肩ロースなどには強火は向いていません。

そのため、最初強火で、途中から弱火に近づけて中まで火を通すという併用する方法を取られることが多いです。

 そうすると程よいキツネ色に表面がなり、中の肉汁の放出が防げるとも言われています。

【弱火】

 弱火で焼くとお肉の中の温度と、外の温度が均一になります。

 また弱火であれば焦げる(炭化する)温度になかなか達しないため、緩やかにお肉の温度を上げて、長時間焼くことが可能になります。

 特にタンパク質は、「45-50℃」を緩やかに通過させることで、急激な凝固による収縮を防ぎ、水分の放出を減らすことができるともいわれています。

 また、たんぱく質の中にもミオグロビンとシトグロムという他の筋肉のたんぱく質に比べて高温に対して耐性のあるたんぱく質が存在していて、高温で一気に焼くとそれらのたんぱく質も他のたんぱく質と化学反応(アミノ酸に変わる)を起こしてしまうが、弱火でゆっくりやくと他のたんぱく質が化学反応を起こして、ミオグロビンとシトグロムがのこるためお肉の中に長時間焼いても赤色が残っていて、ジューシーな焼き上がりになります。

 更に、結合組織のコラーゲンは70℃以上で長時間調理することがゼラチン化して柔らかくする条件のため、強火だとそれが実現できないが、弱火だと実現できます。

 ただ、コラーゲンは加熱温度が高いほど短時間でコラーゲンになるという性質ももっていて、さほどスジなどが入り組んでいないものは強火でゼラチン化はさせた方が早く調理ができるかもしれません(ただしタンパク質は80℃以上で焼くと瞬時に凝固する性質をもっていて水分を失うスピードも速くなっているので注意が必要)。

 大雑把にまとめると、やわらかいお肉は強火で短時間、硬めのものは弱火で長時間加熱するのが最適というまとめ方もあるが、これは必ずしも成功するわけではないです。

 月並みですが、上記の性質を合わせて、以前の講座のお肉の変化を見極めながら焼くことが、上手く焼くコツなのではないでしょうか。

※『McGEE FOOD&COOKING』HAROLD McGEE(この著作が一番分析は詳しいです。英文ですが)と『調理と理論』山崎清子ら、『肉の科学』沖谷明紘、『うまい肉の科学』成瀬宇平などの著作を参照。https://toyokeizai.net/articles/-/115493、https://mi-journey.jp/foodie/40269/ も参照。

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