8/27に交雑牛の枝肉の解体を視察する機会に恵まれました。2月にマトンの解体をした経験も踏まえて個人的な観察に基づき、部位の特徴と筋肉の相関について書きます(あくまで私見なので)。
A.ネック
【起始】頸椎1~胸椎3【停止】頸椎1~6位までの横突起および椎体
≪見た目≫脊椎の椎体から横突起に走っている様はヒレ肉(大・小腰筋)に似ている
≪味≫焼肉などでも柔らかめで美味しいが見栄えが悪いため挽材などになる
≪機能≫頸部を前屈させる
【起始】棘突起(頸椎上部)と項靭帯【停止】乳様突起と後頭骨
≪味≫脂が多いため、ダイレクトに旨味を味わえる
≪機能≫片方が機能するとその方向に首が回り、両方が機能すると首が上に向く
B.肩ロース
a.胸椎より上の部分
【起始】下位頸椎と上位胸椎の横突起【停止】後頭骨の上・下項線間
≪見た目≫多腹筋になっているため、肩ロースの上部に印象的に見える
≪味≫もちッとした食感とその中から肉汁を含む美味しさ(ラムモモに近い)
≪機能≫頭部の脊柱の後屈、側屈、後方への回旋
※頸動脈が頭半棘筋と恐らく頸板状筋の間に位置する。
b.胸椎部分
●ロース側の断面は、
【起始・停止】頸椎~腰椎の横突起および腰椎の乳突起および肋骨の付け根辺り、更に仙骨の後面までついている、ネックからランボソまで繋がっている)
≪見た目≫真のように丸くなっている。下に行くにつれて太くなる。
≪機能≫頭部および脊柱の後屈・側屈・回旋
【起始】胸椎の横突起【停止】頸椎2~胸椎上位の棘突起が停止)
≪機能≫頭部および脊柱の後屈・側屈・回旋
≪味≫しっかりとしていて噛めば噛むほど味が出て来る
【起始】外後頭隆起から正中を下に下りるように、項靱帯、上項線、第七胸椎から第十二胸椎【停止】三角筋後部と繋がり、おそらく上腕骨が停止
≪見た目≫リブ側からみると一番中心側の外側につく。ネック側に行くと棘上筋を覆うようについている
≪機能≫重いものを持つとき、肩甲骨が下に下がるのを防ぐ。また生姜疫を吸収する保護的な役割。
三角バラと上バラに繋がる、人の前鋸筋に近い
【起始】頸椎横突起および肋骨1~7(このためロースに入らない) 【停止】鋸筋面
≪機能≫肩甲骨と体幹の移動、深呼吸の吸気
≪味≫肉質が柔らかく、霜降りもほどよく入る
【起始】肋骨12~7の肋骨角内側 【停止】肋骨1~6の肋骨角
≪機能≫脊柱の正常な湾曲を保つ
≪味≫脂が多いがスリットを入れればジューシーで美味しい
※広背筋は肩をカットする際外れる
C.肩バラ
浅胸筋:これは四足動物は鎖骨がないため大胸筋と三角筋が合体したもの
【起始】胸骨全面・肋軟骨1~6 【停止】上腕骨の大結節稜
≪機能≫腕立て伏せの一連の動作
≪味≫肩こぶや天下一とも言われ固い
深胸筋:小胸筋に当たる
【起始】胸骨板から肋骨の胸骨板寄りの下位まで
【停止】肩関節の付け根
【起始】頸椎横突起および肋骨1~7(このためロースに入らない) 【停止】鋸筋面
≪機能≫肩甲骨と体幹の移動、深呼吸の吸気
≪味≫肉質が柔らかく、霜降りもほどよく入る
腸肋骨筋辺りは中落になる
D.肩
【起始】肩甲骨の棘上咼【停止】上腕骨の大結節上部、肩関節包
≪見た目≫大結節に向けて太目の筋が中に入り組んでいる
≪機能≫体の横で買い物かごやカバンを持つ動作などで働く
【起始】肩甲骨の棘下咼【停止】上腕骨の大結節後中部、肩関節包
≪見た目≫カブリ(おそらく小円筋)と本ミスジに分かれる、豚などでは更に外側に僧帽筋がついていることも
≪機能≫髪を後ろにとく動作、かきあげる動作などで働く。
【起始】肩甲骨前面・肩甲骨の外側縁・下角【停止】上腕骨の小結節、肩関節包
≪見た目≫広背筋とほぼ平行に上腕骨に対して流れる
≪機能≫後ろのポケットに手を伸ばすときなどに働く
【起始】上腕骨後面【停止】尺骨の肘頭
≪見た目≫人に比べかなり太く三角に見える。特に停止側の筋はT字に入っている
≪機能≫ボールを投げたり、ドアを前方に押して開けたりする動作や、トレーニングの腕立て伏せの腕を伸ばす動作などで働く。
【起始】上腕骨後面【停止】尺骨の肘頭
≪見た目≫外側と内側の間に腋窩動脈が流れるのが観察できる
【起始】肩甲骨の関節上結節【停止】橈骨粗面
≪見た目≫肩スネの一部として使われることも多い
≪味≫筋は入っているが肉質は柔らかい、薄めに切って焼しゃぶでも美味しい
【起始】T6-L5の棘突起・正中仙骨稜・腸骨稜の後方、第9-12肋骨、肩甲骨下角 【停止】上腕骨の小結節稜
≪見た目≫下部はバラやロースにつく。肩ロースに見れないのは肩と肩ロースの境目が広背筋だから。
≪味≫きめの粗い肉質に分かれた脂がその場でそれぞれ一瞬とける感じ。単体より何かと付け合わせが良いかも。薄目が圧倒的に推奨。
E.ロース・ヒレ
リブ側の断面は、僧帽筋・最長筋・背半棘筋・頭半棘筋・腸肋筋・広背筋・菱形筋・前鋸筋が主に観察される。ランプ側の断面は、仙骨まで繋がる最長筋(腸肋筋などとも合体し脊柱起立筋となる)と大殿筋に繋がるパートに分かれる。
【起始・停止】頸椎~腰椎の横突起および腰椎の乳突起および肋骨の付け根辺り、更に仙骨の後面までついている、ネックからランボソまで繋がっている)
≪見た目≫真のように丸くなっている。下に行くにつれて太くなる。
≪機能≫頭部および脊柱の後屈・側屈・回旋
【起始】下位頸椎と上位胸椎の横突起【停止】後頭骨の上・下項線間
≪見た目≫多腹筋になっているため、肩ロースの上部に印象的に見える
≪味≫もちッとした食感とその中から肉汁を含む美味しさ(ラムモモに近い)
≪機能≫頭部の脊柱の後屈、側屈、後方への回旋
※頸動脈が頭半棘筋と恐らく頸板状筋の間に位置する。
【起始】胸椎の横突起【停止】頸椎2~胸椎上位の棘突起が停止)
≪機能≫頭部および脊柱の後屈・側屈・回旋
≪味≫しっかりとしていて噛めば噛むほど味が出て来る
【起始】外後頭隆起から正中を下に下りるように、項靱帯、上項線、第七胸椎から第十二胸椎【停止】三角筋後部と繋がり、おそらく上腕骨が停止
≪見た目≫リブ側からみると一番中心側の外側につく。ネック側に行くと棘上筋を覆うようについている
≪機能≫重いものを持つとき、肩甲骨が下に下がるのを防ぐ。また生姜疫を吸収する保護的な役割。
三角バラと上バラに繋がる、人の前鋸筋に近い
【起始】頸椎横突起および肋骨1~7(このためロースに入らない) 【停止】鋸筋面
≪機能≫肩甲骨と体幹の移動、深呼吸の吸気
≪味≫肉質が柔らかく、霜降りもほどよく入る
【起始】肋骨12~7の肋骨角内側 【停止】肋骨1~6の肋骨角
≪機能≫脊柱の正常な湾曲を保つ
≪味≫脂が多いがスリットを入れればジューシーで美味しい
※広背筋は肩をカットする際外れる
大腰筋(太い所をシャトーブリアンという)
【起始】第12胸椎~4腰椎までの椎体および椎間円板・全腰椎の肋骨突起 【停止】大腿骨の小転子(恥骨筋と停止がほぼ同じで癒着)
≪機能≫脚を前方に振り出す動作
小腰筋(英語ではチェーンと表現)
【起始】T12及びL1の椎体外側面
【停止】腸恥隆起と付近の筋膜
≪機能≫脊柱・腰部の弱い屈曲
F.バラ
【起始】頸椎横突起および肋骨1~7(このためロースに入らない) 【停止】鋸筋面
≪機能≫肩甲骨と体幹の移動、深呼吸の吸気
≪味≫肉質が柔らかく、霜降りもほどよく入る
【起始】恥骨の恥骨結合部、および恥骨結節上縁【停止】上方に向かい第5〜第7肋軟骨と剣状突起に付着する
≪機能≫脊柱を前に曲げるときに働く。肋骨をおさえる働きもあり、腹圧を高め、排便、分娩や咳などの際にも補助する。
≪見た目≫多腹筋であるため見た目で分かる
【起始】T11-L2の棘突起【停止】第9-(11)12肋骨の外側部下縁
≪見た目≫インサイドスカートの下側につく。ロースのランプ側と繋がっている
≪機能≫第9-12肋骨を引き上げ、呼気を助ける
【起始】第5-12肋骨の外面【停止】腸骨稜の外唇前半、猟頸靭帯、腹直筋鞘前葉
≪機能≫腹圧を高め、排便・排尿・嘔吐・くしゃみ・咳および分娩などを補助すると共に、腹部の引き締めや正しい姿勢維持など
G.モモ
①ランイチ
【起始】腸骨翼の殿面筋、仙骨・尾骨の外側縁、仙骨結節靭帯、胸腰筋膜 【停止】(深層)大腿骨の殿筋粗面(浅層)大殿筋の外側部で腸脛靭帯に移る
≪機能≫階段を上る動作や座位からの起立動作で強く働く
【起始】腸骨翼の殿筋面【停止】大転子の前面
≪機能≫大腿の外転、骨盤の安定
【起始】仙骨周辺【停止】大転子周辺
≪機能≫平泳ぎの足の動きなど
【起始】腸骨翼の殿筋面、腸骨稜の外唇・殿筋筋膜【停止】大転子
≪機能≫歩行中に、地につかいない脚の臀部が下がらないようにする、また骨盤の安定
②シンタマ(大腿四頭筋)
【起始】大腿骨転子間線の下部及び大腿骨粗面内側唇【停止】膝蓋骨の上縁及び内側縁、脛骨粗面
≪見た目≫外側の皮の筋が上から外側に向けて走る、内側にしたから中に入った筋がある、シンシンの真ん中上を切り開き外していく
≪機能≫階段を上がる時、座位からの立ち上がり、ジャンプするときに働く、また座る時に腰の下ろすスピードをコントロールする
【起始】大腿骨の上部前面【停止】膝蓋骨の底、脛骨粗面
≪見た目≫外皮の太い筋が下側から内に向かって走る、これがシンシンとの境目になる
≪機能≫股関節の安定性を保ち、膝をまっすぐにさせる。座る動作などで下肢の動きをコントロールする。
【起始】腸骨の下前腸骨棘、寛骨臼上縁【停止】膝蓋靭帯となり、脛骨粗面に付着
≪機能≫膝をまっすぐにし、股関節を屈曲させる。正座からの立ち上がりや歩行、走行時に膝を伸展させる際に働く。
≪見た目≫上側に内側に入った太い筋がある、下側は外皮が外側から走る
【起始】大腿骨の大転子の基部、粗線外側唇【停止】膝蓋骨の外側もしくは上縁、脛骨粗面
≪見た目≫シンシンの筋の隣に脂を挟んで友三角が分けられる
≪機能≫股関節の安定性を保ち、膝をまっすぐにさせる、座る動作などで下肢の動きをコントロールする助けをする。
③内もも
【起始】恥骨上枝・閉鎖膜外面とその周り【停止】大腿骨・大腿骨の転子咼
≪機能≫股関節の内転、屈曲、外旋、歩行などで姿勢を保持する役割
≪見た目≫腰椎の横突起から起こるヒレがここの坐骨の閉鎖孔で繋がっている。また足の血管が大きく観察できる
【起始】恥骨の下方【停止】大腿骨の後面中央および粗線の内側唇上部1/3
≪機能≫大腿の引き付け及び膝を閉じる際に働く。また腰の回転にも影響する。
【起始】恥骨下枝、坐骨枝、坐骨結節【停止】大腿骨粗線の内側唇・内側上顆、脛骨内側顆の下方
≪機能≫乗馬や平泳ぎの足の動き、走行中、脚を前方へ踏み出す最後に減速させ、最後に減速させ、体幹が屈曲するのを防ぐ。直立時に大腿を内旋させたり、大腿を固定すれば骨盤を後傾させる働きがある。
【起始】上前腸骨棘・恥骨結合の外側【停止】脛骨粗面の内側・脛骨の内側面
≪見た目≫人では薄筋はあまり広くないようだが牛は広い、縫工筋のラインでシンシンと内ももを分割する
≪機能≫胡坐をかくときに働く。大腿四頭筋と協力して、膝を伸ばした位置に固定する。両膝を曲げて正座するときなどに働く。
④外もも
【起始】坐骨結節・大腿骨の粗面外側唇下方1/2【停止】腓骨頭、下腿筋膜
≪見た目≫上部はイチボと繋がる、イチボ側は仙骨から大転子に向かって筋繊維が流れ、それ以降は下の方を向いていく、シンシンと分割する部分に太い筋があり、その下に短頭がありそこにも薄い筋がある。
≪機能≫股関節の安定性を保ち、膝を曲げたり外旋させたりする動きがある。長頭には、大腿を固定すれば骨盤を後傾させる働きがある。
【起始】坐骨結節の内側面【停止】脛骨粗面の内側
≪味≫霜降りが入っているが固いと言われているため薄く切る必要がある
≪見た目≫下の方が腱になる
≪機能≫胡坐や正座からの立ち上がり動作において膝を立てる際に働く。大腿を固定すれば骨盤を後傾させる働きがある。
【起始】腓骨頭、腓骨と脛骨の間のヒラメ筋腱弓、脛骨後面のヒラメ筋線と内側 【停止】踵骨隆起
≪見た目≫外モモに付着するようにハバキ(腓腹筋)がついいて、その内側のお肉が千本になる。筋が多いが肉質は柔らかい。
≪機能≫足首を伸ばしたり、つま先立ちの動作時に働く。また起立時は下腿を後に引き支える働きもある。