「いわゆる「昭和婚」(近所や知人の紹介などのお見合いにより結婚が成立していた時代)が終わりを告げ、自発的に行動しなくては「結婚」できなくなった時代(婚活時代)になってしまったのだから、頑張って婚活をしていこう」

と論じた本が、21世紀

『「婚活」時代』 著・山田昌弘&白河桃子 2008年3月1日 ディスカバー・トゥエンティワン

。。。になります。

「昭和婚」から「婚活時代」への時代の空気を、本書の超訳によってとらえていこうと思います。

【1】「昭和婚」の時代

男女ともに未婚率に変化があらわれたのが、1975年になります。

その時代付近の結婚事情は、
「職場とお見合いによって、結婚相手にふさわしい相手に自動的に出会えるシステムが実現されていました。
事実上、職場は、総合職の男性と一般職の女性が出会う場として、企業がセッティングする集団見合いの場のようなものでした。さらに、そこで相手を得られなかった場合のセーティネットとして、「お見合い」も存在していました。男女とも、ある程度の年齢になれば、上司や親類などを通じて、一つ、二つと、見合い話が向こうからやってきました。

出会いが、自分の意志とはかかわらず自動的に設定されるという意味では、職場と見合いのほかに「きょうだいの紹介」というのもありました。1960年代ぐらいまでは、「きょうだいの紹介」もかなり多かったです。」(※1)

70年代も「きょうだいの紹介」が残っていて、本書では「かぐや姫」の70年代ヒットソング『妹』を引用しています。

1960年代の結婚で僕が思い出すのは、水木しげるさんです。
水木しげるさんは都会に出て漫画家として忙しくしていて結婚に無関心だったところ、両親が住んでいる地域の女性をお見合いで紹介され、両親に半ば強引に結婚を取り決められていました。手塚治虫さんもお見合いだったような気がします。
ただ水木しげるさんのアシスタントさんが、アシスタントさんの地方から都会に住んでいる人に憧れて上京してきた女性と恋愛するも、結局女性は両親の薦めで地方に戻り、お見合いで結婚してしまったという話があるように、恋愛結婚も選択肢としてはあったのだと思います。

【2】昭和結婚の時代と崩壊した時代の恋愛観の比較

昭和婚の本質は、自動的に出会いから結婚まで至るプロセスがセットされていたというところにあると思います。

裏を返せば、自動的にセットされなくなっていったというのが、「昭和婚」以降の流れとなるのだと思います。
自動的にセットされなくなって自由になったら、結婚においては必要とされるものは一般的に「恋愛」とされるため、恋愛がさまざまな場で盛んになるということになります。

この恋愛観の変化を例として挙げてみます。

「昭和婚」の時代は、恋愛は決められた中で基本的にするものであっため、決められたところ以外でする恋愛は「貧しさ」が付きまとうイメージがありました。
70年代にヒットしたものとして、「四畳半フォーク」というものがあったらしいのですが、そこで歌われている恋愛は貧しいけれども幸せを感じる、というようなものであったらしいです。
決められたルールを守らず反対を押しきって、恋愛をするわけなので、両親や周りの援助や理解が得られず、金銭的にも貧しくなりがちということなのでしょうか。

しかし、本書では崩壊以降の恋愛観が変わったと思われることとして、1987年のテレビドラマ『男女7人物語』が分岐点ではないか、と筆者(白河)は予想しています。
「それまでのテレビドラマも、結婚をゴールにする物語でした。(中略)
それは、バブル直前、1987年の作品で、男女7人がくっついたり別れたり、また別の人とくっついたりと、結婚はとりあえず置いておいてセックスを伴う交際をするのが当たり前に描かれたはじめてのテレビドラマでした。」(※2)

『東京ラブストーリー(1991年)』や『あすなろ白書(1993年)』などその傾向を引き継ぎ、恋愛と結婚が結び付かなくなり、恋愛自体を楽しむことがトレンドとなっていると思います。

バブル直前からバブルまで、特に「恋愛」を市場とした産業は拡大する一方でした。
つまり、「昭和婚」が崩壊ともに、「恋愛」を市場とした産業が発達することが目にとれるのだと思います。

「恋愛」市場の拡大は、出会いから結婚までのさまざまな規制を緩和させ、好きな「段階で」「相手と」「方法で」恋愛ができる「自由恋愛」の普及に 繋がっていったのだと思います。

この恋愛観の変化は、様々な要因があるとは思いますが、(私見では)一番の要因は国民(特に若者)が経済が成長して、お金を持つようになったということではないでしょうか。
要因については、本書では言及していないような気がします。

【3】「婚活」時代

「自由恋愛」は、理念として、「自然と好きな人と出会い、好きな人を選択し、交際の上結婚にいたる」というイメージがあるため多くの人に支持されてきたのだと思います。

経済成長が続き、多くの人の所得が増えたため、娯楽に費やす(特に恋愛に費やす)費用が増えて、1980年代後半から1990年代前半までの、「バブルの時代」に「自由恋愛」をもとにした恋愛市場はピークを向かいました。

しかし、「バブル」が崩壊して、経済が停滞した時期(ロストジェネレーション)を下手あと、2000年代半ばから後半にかけて、中流が崩壊し、二極化社会になってしまいました。

そこで、実際には、出会いの場は限られているし(自発的に作らないと確率的に少ないし)、好きな人って案外決めるのが難しいし(ルックス?お金?性格?)、恋愛をしても結婚するタイミングがなかなか掴みづらいし、ということで不自由を感じている人が出てきます。

これは「規制→自由」化が進むときに、恋愛に限らず起こることだと著者(山田)は述べており、だからこそ就活と同じように自己分析などをして、出会いの場を作り、面談を重ねるなど、自発的な行動を推奨しています。

※1、2ともに『「婚活」時代』引用

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